アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト

アルコール関連問題

知識

なぜアルコール依存症者は「うつ」になるのか?

もともと「うつ病」があって、そこからアルコールに依存していく人がいる一方で、逆にアルコール依存によって「うつ状態」になっていく人々もいます。

飲酒の習慣が始まった当初は、飲むことで「ふつう」の気分が「ハイ」な気分へと移行しますが、問題飲酒の段階に至ると、アルコールが入っているときは「ふつう」の気分でいられても、アルコールが抜けると「落ちこみ」に襲われるようになります。

この頃になると、飲酒によるさまざまな問題も起きてきます。
飲みすぎを心配したり責めたりする家族との間で不和が生じたり、肝臓病などのアルコール関連疾患、仕事の効率低下や仕事上の失敗、周囲の信頼を失う、飲酒運転など社会的な問題、経済的な問題、失職……。
酔っている間はこうした悩みを忘れていられても、しらふになれば山積みの問題が目の前にあります。
うつ的な気分になるのも当然のことです。

加えて、食欲を失い、やせてくる……この状況で、アルコール専門ではない一般の精神科を受診すれば、うつ病と診断されてもおかしくありません。
実際に多くの精神科で、アルコールの問題が見逃されているのです。

イギリスの精神医学のガイドラインにも、飲酒問題がある人でうつ病や不安障害を疑う場合は、アルコールを切って3~4週間経過を見てから判断するよう書かれています。
https://www.nice.org.uk/guidance/cg115/chapter/1-Guidance

アルコール依存症にともなって「うつ」になっている場合、断酒してしばらくすれば、うつ状態も改善していくケースが多数です。
断酒後も「うつ」の問題が残るケースでは、アルコール依存症の回復と並行して、うつ病としての治療を受ける必要があります。