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アルコール関連問題

ASK通信 52号(2013年12月10日)より・一部改編

関係者が「アル法ネット」に結集!

2012年5月31日のアル法ネット設立総会
アル法ネット設立総会
2012年5月31日

基本法を作ろうという機運が生まれたそもそものきっかけは、WHOが2010年5月の総会で「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を決議し、加盟国に対して総合的な対策を求めたことでした。

日本での対策の基盤づくりのため、7月に日本アルコール関連問題学会が「基本法制定推進」を決議し、ASKと全日本断酒連盟に協力要請したのを皮切りに、関係団体が次々と動きを開始しました。日本アルコール・薬物医学会と日本アルコール精神医学会(現・日本依存神経精神科学会 )も推進を決議、三学会合同構想委員会が発足します。

しかし2011年の東日本大震災により、この動きはいったん中断。その間も関西の関係者による努力は続き、同年12月にアルコール問題議員連盟が基本法への取り組みを決定しました。

2012年5月、関係団体が結集した「アル法ネット」が設立され、ASKと全日本断酒連盟が事務局となって議連との協議の窓口を務めることになりました。
加えてASKはホームページ作成と運営など情報の整理と伝達、各方面の調整を主として担当。全断連は地元からの議員への働きかけで大きな力を発揮します。

進化する法案!

アル法ネット設立に先立つ2012年3月、同設立委員会は議連に基本法の「構想メモ」を手渡していました。議連は法制局に骨子案の作成を指示。設立総会の当日、議連から最初の骨子案が示されます。
そこからアル法ネットの要望や関係省庁の意見などを取り入れた修正が始まるのですが、ASKにとっての大きな課題は、酒類業界を「反対勢力にしない」ことでした。
7月の間に、ビール酒造組合・日本酒造組合・洋酒酒造組合・小売酒販組合などを回り、基本法の趣旨を説明して一定の理解を得ました。

政局の混乱をくぐり抜け、5回の修正と法律の名称をめぐる白熱した議論の末、11月14日に骨子案がまとまりました。
議連総会での了承が衆院解散宣言の一時間前。ギリギリすべりこみです。

その後、衆院選挙と政権交代をはさんで、自民党主導の専門家の意見聴取や酒類業界との調整が行なわれ、条文化の作業が進みました。
何度もの修正が重ねられた法案を、2013年6月25日に議連が承認。

残る課題は、法律の所管を厚労省にするか、内閣府か――です。議連もアル法ネットもヤキモキする中、引き受け手が決まらず、宙ぶらりんのまま、3ヵ月あまりが経過することになります。

各地での集い

2013年12月8日(日)アルコール健康障害対策基本法 制定を祝う集い in 岡山
アルコール健康障害対策基本法 制定を祝う集い in 岡山
2013年12月8日

その間、法律制定を求める動きが各地で盛り上がっていきました。
2013年5月11日に名古屋で「基本法制定を願う集い」が行なわれ、雨天の中、449人が参加しました。
9月1日には大阪で「集い」が行なわれ、1239人が参集。
続く12月8日、岡山での「集い」は、なんと基本法成立の翌日。急きょ看板をつけかえ、「基本法制定を祝う集い」として行なわれました。

2013年5月11日(土)アルコール健康障害対策基本法 制定を願う集い in 名古屋(アル法ネット)

2013年9月1日(日)アルコール健康障害対策基本法 制定を願う集い in 大阪(アル法ネット)

2013年12月8日(日)アルコール健康障害対策基本法 制定を祝う集い in 岡山(アル法ネット)

2014年2月15日(土)アルコール健康障害対策基本法推進の集い in 大分(アル法ネット)

2014年5月25日(日)アルコール健康障害対策基本法推進の集い in 東京(アル法ネット)

所管をバトンタッチする初の試み

さて、「法律の所管を厚労省にするか、内閣府か」問題はどうなったでしょう?
健康面の対策を担うのは厚労省ですが、飲酒運転・暴力など関連問題は幅広く、また酒類業界との調整も必要。厚労省としては、単独では仕切れない、との立場。
一方、関連省庁の連携に強い内閣府は、過重となった業務を整理する方針が打ち出されているため引き受けられない、と言います。

議連は内閣府を所管とする案を採択しましたが、当の内閣府が首を縦に振らないまま事態はこう着状態になってしまいました。
この問題に決着がついたのは2013年10月9日。アメリカからFAS研究の権威・ライリー博士を招いての講演会に先立って開かれた議連総会の場でした。

「当初は内閣府、のちに厚労省に移管」という異例の方式で、どちらも了承です。
法案の制定時には、基本計画を作成するため、関連省庁のとりまとめが大きな作業となります。この間は内閣府が所管し、おおよそのレールが敷かれたところで厚労省にバトンタッチするのです。こうした移管を附則に明記するのは法制史上初めての試みで、「今後のモデルケースにできる」と内閣府も乗り気になりました。

というわけで、ついに法案が完成し、全党合意へと至りました。審議を待つ法案が山積みの中、全党で合意した上での国会上程は、大きな強みです。

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