アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト

依存症って何?

依存症の治療と回復

依存症は、治療・援助を受けたり、自助グループに参加することで回復が可能な病気です。
ここではまず、治療の場がもっとも見つけやすいアルコール依存症を例にとって説明します。

 

アルコール依存症の場合

回復へのスタートは、医療から始める/回復施設から始める/自助グループから始める、という3つの選択肢があります。
お住まいの地域や、本人と家族の状況によって、選択の幅は変わってきますが、一般的なのはまず、離脱症状や合併症のケアもできる依存症専門の医療機関にかかることです。

 

医療の選択肢

入院か、通院か?……それぞれ別のメリットがあります。
入院はアルコールのない安全な環境の中で治療が始められ、家族にとってはホッと一息つける時間にもなります。
通院は最初から日常の中で飲酒欲求に対処する練習ができ、仕事や家庭生活とも両立できる可能性があります。
治療プログラムは、依存症という病気について知ることや、自分の心身の状態に気づくこと、飲まないための対処法を身につけることなどが中心で、多くの場合、グループで行なわれます。

そのほかの選択肢

回復施設を利用する方法もあります。施設により、入所や通所があります。
自助グループで回復を始める人もいます。日本独自のグループ「断酒会」と、アメリカで始まった「AA」、それぞれの特色があります。

回復はプロセス

治療や回復の場につながれば、それで治るわけではありません。
たとえば入院期間が終わって退院したら、それはゴールではなく回復のスタートです。
というのも依存症という病気は、糖尿病などと同じように生活習慣に関わる慢性病。じっくりとつきあっていく必要があるのです。
そこで、医療機関で治療を始めた人も、自助グループに参加して地域での回復の足がかりを作ることが大切です。
治療後に、生活全体を立て直しつつ回復していくため、施設を利用する人もいます。
道筋はいろいろありますが、大切なのは「一人ではなく仲間とつながっている」こと。
回復のプロセスの中では、さまざまな課題に直面します。家族関係の作り直し、失った信用を取り戻すこと、復職や求職、ときには離婚の痛みをのりこえたり、依存の背景にあった心のむなしさや喪失体験などに向き合う必要もあるかもしれません。
そんなとき、同じように歩んできた仲間の存在が大きな力となります。
最初は誰しも「他の人に言われてしかたなくやめている」状態ですが、しばらくすると「自分でもやめたいと思ってがんばる」ようになり、やがては「酒が必要ではなくなってきた」ことに気づく…これが多くの回復者がたどるプロセスです。

再発の可能性

回復の途上で、再び飲んでしまうなど依存症の症状の再発が起きることがあります。
けれど今までの苦労がゼロになるわけではありません。
その経験は、どんなときに再発のリスクがあり、どうやって切り抜けたらよいかという、今後への貴重な知恵となります。
再発したことを隠さず、主治医や医療スタッフに助けを求めたり、自助グループに再び足を運ぶことが大切です。再発したことを仲間に話すのは、仲間にとっても、病気を改めて理解する役に立ちます。

そのほかの依存症の場合

さて、アルコール以外の依存症についてはどうでしょうか。
治療や回復の場は、地域によって異なってきます。
厚生労働省は依存症対策として、各都道府県や指定都市ごとに、アルコール・薬物・ギャンブル依存の専門医療機関を設ける実施要項を打ち出していますが、薬物依存を扱う医療機関はアルコールに比べてまだまだ不足しています。回復施設としては全国に「ダルク」などがあり、自助グループも各地にあります。家族のグループも活発に活動しています。
ギャンブル依存については治療の受け皿はさらに少なく、どんな治療が有効なのか、そもそも医療がどこまで関わるべきなのかについても、考え方がまちまちです。自助グループは各地にあり、家族のグループも活発に活動しています。

依存症の種類によって、回復の優先事項が異なる面もあります。
アルコール依存症や薬物依存症の場合、まず酒や薬物を断つことが優先です。しらふになって初めて、自分にとって何が必要で何が大切か、考えることができます。またアルコールや薬物の影響下では感情が揺れやすく、自分や他人を傷つける極端な行動のリスクがあります。
それに対して、たとえば摂食障害では、過食や食べ吐きがあっても「食べることを断つ」わけにはいきません。症状をなくすこと自体にとらわれない、というのが自助グループなどでの考え方です。
症状のあるなしが問題なのではなく、自分自身との関係や周囲の人との関係が変わっていく中で、自然と「症状が必要なくなってくる」のです。
自傷行為の場合も同じです。リストカットという「症状」だけを無理やりやめさせようとしても、心の痛みが存在する限り、他の対処方法がなければ、苦しくなるだけ。
周囲の人に受けとめてもらう体験や、人とのつながりを育てていくことを通して、やがて自傷が必要なくなってくる…それが回復です。

ただし同じ「行為依存」でも、たとえば性依存をベースにした性犯罪の行為がくりかえされる場合(痴漢・盗撮・身につけるものの窃盗など)は、話が違ってきます。
違法というだけでなく、被害者が存在するからです。
症状すなわち欲求におそわれたとき、どんな対処によって加害行為をせずに切り抜けるか、「再犯防止」がまずは重要になります。
ただしこうした支援の場は、まだまだ限られているのが現状です。

このように回復の道筋は依存の種類や状況によって異なりますが、
◎回復がプロセスであること
◎そのプロセスを歩むために「同じ課題を抱えた仲間の存在が重要であること
この2点は共通です。

ASKでは長年、さまざまな依存症についての情報発信を行ない、仲間どうしで支え合う動きを後押ししてきました。
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