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活動履歴

第9回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました

2022年11月19日・20日、第9回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座を開催しました。
この事業は、厚生労働省「令和四年度依存症民間団体支援事業費補助金」を受け、受講料無料で実施しています。
この講座の特長は、アルコール・薬物・ギャンブルを中心とした幅広い依存症の、当事者・家族・支援者が一堂に会し、対等な立場でお互いから学び合うこと。参加者がリソースそのものです。

第8回・第9回の募集に対して154名の応募があり、領域・職種・地域などのバランスをとって選考。第9回は25名での開催になりました。

開催時、第7波は収まり、第8波に向けて少しずつ感染が増え始めた時期でした。
会場の東京(浅草橋)に、首都圏に加えて、青森・宮城・三重・岐阜・大阪・兵庫・岡山・兵庫・長崎・沖縄から参集。休憩時間のたびに活発に名刺交換が行なわれ、換気とディスタンスに配慮しながら、熱く語り合い、お互いの経験を分かち合うことができました。
アルコールの当事者が4名、家族が3名、薬物の当事者が1名、ギャンブル当事者が2名、家族が1名。支援者は医師・看護師・ソーシャルワーカー・公認心理師・施設スタッフ・大学教員・保護観察官・産業カウンセラー……と多岐にわたっており、当事者・家族で支援者が多いのも特徴でした。

最終テストと提出物などから総合的に審査し、25名全員が合格しました。
第9回養成講座のようすを写真でどうぞ。最後に受講者の感想もあります。
なお、来年度も補助金申請の上、実施の予定です。決まり次第、お知らせします。

養成講座を受講して(認定アドバイザーの感想)

【当事者】

●アルコール依存症当事者(岡山)
アルコール以外の依存について学べて良かったと思います。
また、断酒会の体験談とアドバイザーとしての体験の伝え方の違いは、なるほどと感心しました。対象者をイメージしての実践プランは、具体的に活動するイメージを持つことにつながりました。アドバイザーとしての体験の話し方のポイントを押さえながら、どう伝えていくか、自己課題として取り組んで行きたいと思います。

●アルコール依存症当事者(長崎)
アルコール以外の依存に対する何らかの偏見が、自分の中にあることに気付きました。知ることは大きな力を持っている証だと思いますので、少しずつ身近な問題として理解していけるよう情報収集したいなと思いました。

●ギャンブル依存症当事者(大阪)
自分がギャンブル依存性の当事者として、自助グループ関連以外でも社会の中でまだまだ経験を発信できること、むしろ伝える役割を求められていることを改めて実感しました。
また、医療関係をはじめ様々な職種の支援者側の皆さんとの貴重な出会いの場、暖かい思いが巡る場となりました。早速、関連するセミナーに当事者として参加してもらいたいのお声も頂き、この会の即効性(笑)も体験できました。
ASKの皆さんはもちろん、参加者全員が依存症というテーマに取り組んで、未来は変えられる、変えて行こうという気概を感じとりました。まさにギフトのような2日間、本当にありがとうございました。

【家族】

●アルコール依存症家族(岡山)
1日目の最初から、アドバイザーとして実践するのであれば、どのような人たちに発信するかというテーマが出ました。早速活発に意見を出し合う方々に圧倒され、私は意見を言うことができませんでした。
すると講師が「今回話せなかった人も、積極的に自らの意見を発信していきましょう」とおっしゃっていました。そこで私は、受講生の方々の熱心で真剣な姿と、的を射た講師の言葉に触発され、ユニット6の「仲間の圧力から身を守る」の「断るデモンストレーション」の場面で勇気を出して自ら手を挙げ、断るロールプレイを行ないました。
そこからは自信がつき、自らの意見を言ったり、講義や他の受講生の意見をしっかりと聴くことができました。
自助グループでは、他者の体験を聴くことも勿論大切ですが、体験談を語ることも大切です。語ること・聴くことの両輪によって依存症者は回復の道を歩んでいきます。
それと同様に、このような勉強し理解を深める場所でも、聴くことだけではなく、自分の意見を発信することがとても大切なのだと気づかせていただきました。
遠慮せず自らの殻を破ってどんどん発信していく姿勢が、アドバイザーとして必要な資質であるとともに、今後生きていく上でも大切な生き方だと感じました。その意味でも、私は今回の受講によって多くの良い刺激を受けました。学んだことを次のステップでも活かしていきたいです。

●アルコール依存症家族(岡山)
さまざまな依存症についての学びがあり、とても勉強になりました。また、依存症の背後に潜む個人や社会的問題についても学べて有意義な時間でした。
ギャンブルやゲーム依存のところで、予防教育のターゲットとして高校3年生という話はとても興味深く、ターゲットとする理由にとても納得しました。
後日、自然体験・環境教育を一緒にしているメンバーが集う機会があり、養成講座で学ばせていただいた依存症になりやすい時期や背景について少し伝え、話し合う時間を持つことができました。メンバーとは、物質や行為に依存せざるを得ない状況に子どもたちが陥らないように、1つの選択肢として自然体験や環境教育が活かせるよう、今後も活動を頑張ろうと意見が一致しました。
今回、学ばせていただいたことはいろいろな場面で役出させることができると可能性をとても感じることができた一瞬でした。今後もさまざまな場面で学んだことを活かせるよう精進していきたいと思います。

●アルコール依存症家族・精神保健福祉士(大阪)
私が依存症の世界に足を踏み入れたきっかけは父のアルコール依存症からでした。そこからアルコールの家族→依存症の支援者と経験を経て、改めて当事者家族としてルームDFに繋がり、依存症の当事者支援の現場から離れました。
今は発達障害の方の支援の現場にいますが、支援者として、依存症の身近さは発達障害の現場でも近いものだと改めて感じました。自分の遍歴は縁があったことと、自己決定の末に今の場所にいますが、不思議な縁だなぁと感じてます。当事者家族、依存症支援現場経験、発達障害の支援者という3足のわらじを自分なりに活かして行ければと思いました。
また、アルコールだけでなくアディクション全般で啓発できるようになりたいです。
大学時代に支援者を志望した理由の一つが、「アルコール依存症を啓発したい」でした。周りにまわってですが、その時の気持ちが今やっと、実現に向けてより確実に動けていける気がしました。

●ギャンブル依存症家族(兵庫)
ライフスキルについてもっと学びたいと思いました。私自身の生きづらさもあるし、このスキルをもっと広めたい。

【支援者】

●精神保健福祉士・公認心理師(宮城)
2日間ありがとうございました。このように全国の当事者・家族・支援者が、参加者も講
師陣も入り混じって行われる研修は、唯一無二かもしれません。知識を得ることはもちろん
ですが、実際にどのように支援をするか、啓発はどのようにするのか、具体的にどのよう
に行動するのか学習することができました。そして立場と地域を超えたつながりを作るだ
けではなく、その繋がりを継続して広げていくことも、この講座では想定されていると思い
ました。安心して依存症になれる、失敗できる社会を作り上げていく一助になれるように
活動をしていきたいと思います。運営のみなさま、コロナ禍の中での開催でご苦労もたく
さんあったかと思います。本当にありがとうございました。

●公認心理師・臨床心理士(神奈川)
依存症は、当事者だけでなく支援者も孤立しやすいことが特徴だと思います。
この養成講座は、当事者と支援者の垣根を越えて「繋がれる」ことが魅力だと思いましたし、支援や予防の力になると感じました。

●保護観察官・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士(埼玉)
私は、普段、法務省の出先機関の保護観察所で、覚醒剤や大麻といった違法薬物を使用して、保護観察になった人たちの指導や支援を行っています。薬物を再乱用せず、回復していくには、どのような関わりが望ましいかを常々考えています。また、年に1、2回程度ですが、大学生に対して、自分の仕事についてゲストスピーカーとして話す機会があります。身近な問題である依存症について、自分事として関心を持ってもらいたいとかねてから思っていました。そのような考え、思いから、今回、受講させていただきました。
養成講座では、当事者の方が講師を務められることが多く、堂々とプレゼンテーションをされているのを見て、とても誇らしい気持ちになりました。依存症で苦労されてきた方の話はリアリティがあり、説得力がありました。また、同じ受講者にも当事者の方が何名もいらっしゃいましたが、その人たちが語るエピソードは、胸が詰まるようなものばかりで、改めて依存症の問題は社会全体で取り組んでいかないといけないと思うようになりました。
私は普段、薬物問題のある人と関わることが多く、その他の依存症の方と出会う機会はあまりないため、今回の養成講座で初めて学ぶことがとても多かったです。
一緒に受講した同期の方、既に各分野でアドバイザーとして活躍されている先輩方とつながりができたことをとても嬉しく思います。フィールドやアプローチは違えど、同じ志を持った仲間が日本全国にいることはとても心強いことです。そのネットワークを十分に活用させていただき、自分にできる予防教育に努めていきたいと思います。

●精神科看護師・保健師(埼玉)
ギャンブルのパートで講師をしてくださった田中さんの力強さが印象的でした。私も子どもたちのために何ができるか、自分は何ができるか考えて、いま目の前にいる子たちにできることを開発していこうと思いました。

●配偶者暴力相談支援センター相談員・産業カウンセラー(大阪) 
ただ知識を伝えるだけでなく、多様な背景を持った当事者がそれぞれに語る物語は心に残るということを改めて実感した。当事者が語ることこそが重要だと思う。私はそういう場を設けられる支援者になりたい。

●医師・少年院医務課(茨城)
知識があまりなかったギャンブル依存・ゲーム依存について詳しく学ぶことができました。また薬物依存・アルコール依存についても今一度復習をして、さらにブラッシュアップすることができました。大変ありがとうございました。1対1のワークもよかったのですが、最後にやったような小グループでの意見交換の場がもうすこし多くてもよいかと思います。

●社会福祉士・精神保健福祉士(神奈川) 
無料で、講演に使えるスライドをもらえて、当事者からリアルなお話を併行して聞けるという、超豪華な研修だと思いました。学んだことを還元できるよう、精力的に活動して行こうと決意しました。

●看護師・保健師(東京)
講演を聴きながら、自分だったらどう伝えようか、どのようにパワーポイントを用いようかなど、具体的に想像しながら参加できる講座でした。

●看護師(三重) 
当事者の方が予防教育アドバイザーとして活動されようとしていることに感動しました。スタッフの皆さまのサポートに感謝します。

●大学准教授・看護師(埼玉)
どのような方たちが、研修会にご出席なさるのだろうとワクワクしながら、一方では緊張をしながら当日を迎えました。
自己紹介を通じて、さまざまな依存症の当事者様はもとより、依存症を取り巻く様々な援助職の方がご参加していることを知り、依存症はもはや、医療の場面だけではなく、社会全体の取り組みが必要とされていることを痛感いたしました。
今後は、このネットワークを生かして、一層、依存症についての知見を深め、当事者様の生の声に耳を傾け、その苦悩をアドボケイトし多くの方に予防活動や、或は、偏見を減らす活動をおこなえることを目指して参りたいと思います。

●看護師・精神保健福祉士(東京)
依存症予防教育アドバイザーに興味関心がある方々が、自分が予想する以上に多くいらっしゃったことに、勇気をもらいました。
講座の内容も、アルコール、薬物、ギャンブルのみならず、ゲーム依存についても。違うところもありながら、共通して持つ依存症の苦労について、体験を交えた話の中で回復していくプロセスも実感させていただけたように思います。
依存症という苦労を持つ人について、患者さんと医療従事者という枠ではなく、身近な人がその苦労を持っていると常日頃から感じていました。この研修を受ける中で、その実感は更に深まったように感じています。
依存することも、初めは何かの助けになっていた。それが少しずつ、苦しい状況になっていく。それでも助けを求める先が依存という行為になってしまい、更にコントロールを失っていくこと。
そして仲間との出会いが、また助けになっていくことを感じ取れたように思います。
何よりも一緒に学びを得て、そのつながりが続いていく、そんな講座であったことが、魅力だと思いました。
これからもつながっていく仲間との出会いに感謝いたします。できればもっと、学び続け、仲間と出会い続けたいと思いました。貴重な講座ありがとうございました。