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目次
 
背景にある「アルコール依存症」という病気
 
かつて、長距離バスの運転者が酒気帯びで蛇行運転し、乗客の通報で逮捕されるという事件がありました。この運転者は朝酒を飲んで出勤し、途中のコンビニで酒を買い、乗客を乗せて出発する前や、サービスエリアでも飲酒していました。彼は職場では勤務態度がまじめなベテランとして通っていたそうです。なぜ「まじめなベテラン運転者」が、こんな飲み方をしたのでしょうか?
アルコール飲料は一般に「嗜好品」とされていますが、同時に「依存性のある薬物」というもう一つの顔をもちます。日々飲酒している人は、長い年月の間に、知らず知らずのうちにアルコールに依存していく(=飲酒のコントロールを失っていく)可能性があるのです。日本には、少なくとも440万人のアルコール依存症者とその予備軍がいるといわれていますが、社会の認識不足のため、そのほとんどが診断も治療も受けていません。
2007年の久里浜アルコール症センターと神奈川県警の調査では、免許取消処分者の中で飲酒運転検挙歴がある200人のおよそ4割に依存症の疑いがあるというデータが出ています。
このように、常習の飲酒運転の背景には、「アルコール依存症」という病気が隠れている可能性が高いのです。職業運転手の中には、不規則勤務の中で手っ取り早く睡眠をとろうと寝酒をするうちに依存症に陥るケースが見られます。
 
●なぜ、アルコール依存症者は飲酒運転をしてしまうのか? 病気の症状とからめて見ていきましょう。
 
1. 飲酒をコントロールできない
 今日は車だから飲まずにいようと思っても、つい飲んでしまう。
 翌朝運転する予定があるのに、二日酔いになるほど飲む。

2. アルコールに耐性ができている
 少量では飲んだ気がせず深酒するため、アルコールが翌日に残ってしまう。
 寝酒をしているうちに必要な量が増え、アルコールが翌朝に残ってしまう。

3. 強迫的な飲酒欲求がある
 待ちきれず、就業中・運転中に隠れて飲む。
 家で飲んでいて酒類が足りなくなると、わざわざ車で買いに行く。

4. アルコールが体から抜けると、不快な症状がでる
 朝や日中に迎え酒をする。
 ↑アルコールが抜けてくると不快な離脱症状(汗・微熱・吐き気・イライラ・不眠・手のふるえなど)が起き、飲酒するとおさまるため、迎え酒が習慣化する。

5. 生活が飲酒中心になっている
 病気が進行すると、深酒・迎え酒で、体内からアルコールが完全に抜けるときがないので、結果的に、運転すればいつでも飲酒運転になってしまう。
6. 問題が起きているのに飲酒をやめられない
 飲酒運転で検挙されたのに、また飲酒運転をしてしまう。
 健康上、仕事上、家庭の中にも問題が起きているのに、飲酒をやめられない。
 
前述のバス運転手の場合も、体から酒が抜けてくると運転に集中できなくなるため、あわててアルコールを補充したのでしょう。アルコール依存症が進行すると、飲むことにとらわれるあまり、自分の行動がどれだけの重大な結果を引き起こすかという判断がきかなくなってしまうのです。
また、この運転手は懲戒解雇・実刑判決という厳しい制裁を受けましたが、2年後、執行猶予中にマイカーを酒気帯び運転して再度検挙されました。この事実は、処分・処罰だけでアルコール依存症者の飲酒運転をやめさせるのがむずかしいことを示しています。必要なのは、根本にある病気の治療であり、断酒なのです。
アルコール依存症は回復する病気です。専門の治療を受けて断酒すれば、ふつうに社会生活をおくれます。早期であればあるほど、本人にとっても職場にとっても家族にとっても失うものが少なく、回復が容易です。ただし、せっかく回復しても飲酒すると再発しますので、断酒会やAAなどの自助グループなどに参加して、日々断酒継続することが大切です。