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セルフエスティーム(自己信頼)

大人にも役立つ、思春期向けのライフスキル・コラムです。

――自分を好きになるスキル

セルフエスティームあなたは、自分のどこが好き? どこが嫌い? 
自分のことをどれぐらい「かまって」いる? 
自分のことをどれだけ知ろうとしている?  

私たちの周囲には、たくさんの人がいます。
友人・きょうだい・親・先生・親戚・近所の人・バイト先の人……。
全部の人づきあいをうまくやろうとすると、かなりのエネルギーを消耗します。
だからつい、「自分ときちんとつきあうこと」を忘れがち。

人の言葉ばかり気になって、自分の思いを押しつぶしていませんか?

友だちとの関係にばかり神経を使って、自分が本当にやりたいことを後回しにしていませんか?

「自分なんかどうせ」とあきらめたり、「こんなんじゃダメだ」と自分を叱ってばかりいませんか?

セルフエスティームとは、自分を好きになり、信頼すること。
その第一歩は、自分のことにちゃんと目を向けて、じっくりつきあうことです。


【ヒント1】自分の親友になろう

自分の親友になろう親友って、どんな人でしょうか。たとえば……
●うれしいことがあったら、一緒に喜ぶ
●困ったときや落ちこんだときは、そばにいてくれる
●失敗しても責めずに、つらい気持ちを聞いてくれる
●相手が期待通りでなくても、見限ったりしない
●お互いに約束したことは、精いっぱい守ろうとする
●誰かよりすぐれているからではなく、ただ「その人だから」、友だちでいる
●困ったヤツだなと思っても、なんとなく許せてしまう

……自分の親友になりましょう。
どんなに仲のよい友人よりも、あなたのことを一番わかって大切にできるのは、あなた自身です。
何かがうまくやれたとき、親友だったら「これぐらいのことで……」なんて言わずに、心からよかったねと言ってくれるでしょう。
落ちこんだとき、つらいときも「たいしたことないじゃないか」「そんなふうに感じるのはおかしい」などと言わずに、気持ちを聞いてくれるでしょう。


【ヒント2】まず自分に聞こう

まず自分に聞こう「友だちはどうしたいのかな?」
「お母さんは何と言うだろう?」
「こんなことしたら、みんなに嫌われるかな?」
……その前にまず、自分はどうしたいのか、どんなふうに思っているか、自分の心の声を聞いてみませんか。

自分の心の声を無視して、周囲の言葉ばかりを聞いていると、自分が何を望んでいるのか、だんだんわからなくなってしまいます。
まず自分に聞くことは、「私は私を一番頼りにしている」「私は私を一番大事にしている」というメッセージを自分に送ることでもあります。

慣れないうちは、うまく答えが返ってこないかもしれません。けれど、いつでも自分に聞いていれば、「こうしたい」という自分の思いがだんだんはっきりしてきます。

その上で、他の人の考えも聞けばいいし、周囲の状況もチェックしてみる。
自分で考えて「ここは相手に譲ろう」「ためしに、あの人の言った方法でやってみよう」「今はやりたいことをちょっとがまんしよう」と決めるなら、それでいいのです。


【ヒント3】言われっぱなしはやめよう

言われっぱなしはやめよう多くの人は、心の中にやっかいな「虫」をたくさん飼っています。
あなたの中にはこんな虫はいないでしょうか。

「もっとがんばれ!」と責め立てる命令虫。
「おまえはそんなんじゃダメだ」と叱りつける批判虫。
「私ってかわいそう……」と悲劇の中にひたらせるイジケ虫。
「どうせ無理だよ……」とささやく諦め虫。
「面倒なことはイヤ。今が楽しきゃいいよ」と誘うなまけ虫。

心の中の声は、頭の中に住みついた親や友だちの声かもしれません。
こういう声を無理に黙らせようとすると、かえって耳にこびりついて離れなくなります。だから、いっそのことボリュームを上げて、何を言っているのかしっかり聞きとってみるのです。
そして、きっぱり言い返せばいい。

命令虫には「どこまでがんばるのかは私が決める!」。
批判虫には「私はダメじゃない! 誰にもそんなこと絶対言わせない!」。
イジケ虫や諦め虫には「私は自分でちゃんとやれる!」。
なまけ虫には「私にとって必要なことなら、面倒でもやる!」。
あなたの頭の中でささやいている虫の声を、ノートに書いてみましょう。
次に、きっぱり言い返す言葉を書きます。
セルフエスティームを育てる、大事なスキルです。


【ヒント4】自分のいいところを探そう

自分のいいところを探そうあなたのいいところを、5つあげてください。
……そう言われたら、困ってしまいますか?

5つどころか、数え切れないぐらいたくさんあげられる! というなら、とても素敵なこと。
でも「うーん、自分のいいところって何だろう」と首をかしげてしまう人も多いかもしれません。

それなら自分の親友になったつもりで、「あなたのここが好き」という点を5つあげてみましょう。自分ではイヤだなと思っているところも、親友の目から見たら、いいところに映るかもしれません。たとえば……

「消極的」→「じっくり慎重に考えるタイプ」
「せっかち」→「パッパッと行動できる」
「おしゃべり」→「話題がたくさんあって楽しい」
「落ち着きがない」→「活発で好奇心が強い」
「傷つきやすい」→「繊細で人の痛みがわかる」
「わがまま」→「自分に素直」
「八方美人」→「人づきあいが上手」
「だらしない」→「細かいことを気にしない」

どんなことも、別の角度から見られるのです。物の見方は決してひとつではありません。
さて、自分のいいところ、いくつあげられるでしょうか。

(補足説明)
WHO会議のブレーンストーミングでは、「セルフエスティーム」がスキルの候補としてあがり、「それはライフスキル教育のゴールではあるが、スキルではないのでは?」と結論づけられた経緯があります。
ASKではあえて、このセルフエスティーム(自己信頼)を思春期に必要なスキルの冒頭にあげました。
日本の子どもたちが国際的に比較してセルフエスティームが非常に低いことが、数々の調査で指摘されています。それは大人になっても引き継がれている課題と考えられます。
「自分を好きになる」「自分を信頼する」ことは、生まれつき決まっている資質でもなければ心の中で念じているうちにできるようになるものでもありません。
日常の中での行動・挑戦・失敗をしながら「練習して習得していく」というプロセスが欠かせないのです。
そのため、「自分を好きになるスキル」として広める意味が大きいと考えました。