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ギャンブル依存

パチンコがようやく「ギャンブル等」に

2018年7月6日、「ギャンブル等依存症対策基本法」が参院本会議で可決され、成立しました。
同法では「ギャンブル等依存症」の定義を「ギャンブル等(公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態」としています。
日本のギャンブル問題の8割方がパチンコというのは依存症関係者の常識。
けれど、これまでパチンコはあくまで「遊技」であってギャンブルではない、とされてきました。店内での換金を行なわない三店方式のためです。それがようやく、「等」という形であってもギャンブルとして位置づけられました。
これに続いて、ギャンブル等依存症が、本人と家族の生活に支障を及ぼし、「多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせている」ことも明記されています。
その対策を総合的に推進するため、国の責務・基本的施策・国による基本計画の策定などを定めたのが、この法律。
アルコールに続く基本法を! という、ギャンブルの家族の悲願がかなったのです。

降ってわいた機会?

ここに至るまでには、かなりの紆余曲折がありました。
2016年12月15日、カジノ解禁への第一歩となる「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」いわゆる「IR推進法」が成立。
マスコミなどでもギャンブル依存症対策が俄かに注目されることになりましたが、この時点で早くも「次の通常国会に依存症対策の基本法案を提出、続いてカジノ設置を定めるIR実施法の制定へ」という道筋が示されました。
いってみれば、カジノ実現のために降ってわいたような基本法の話。
だからこそ、おざなりな対策でお茶を濁されてはたまらない、これを何とか好機に変えよう! と動いたのが、ギャンブルの家族を中心とする「ギャンブル依存症問題を考える会」でした。

通常国会に法案提出というと、たった半年しかありません。与党から基本法案の骨子が示されると、「考える会」とASKはただちに、「緊急要望」を行ないました。

要望事項のひとつは、啓発週間について。ギャンブル依存の啓発週間がアルコールと同じ10月の日程とされていたため、「これではどっちつかずになり、啓発の効果が下がる」と訴えました。この要望は受け入れられ、ギャンブルの啓発週間は5月に変更。

もっとも大事な要望は「関係者会議」の設置でした。
アルコールと同様、当事者や家族を含めた関係者会議を設けてほしい。実効性のある対策のためには、官僚や事業者だけでなく、依存症対策に長年取り組んできた関係者の声が欠かせないのです。
しかし壁は厚く、2017年の通常国会終了間際の6月、提出された与党案には関係者会議は入らず。どうやら、基本法の主管となる内閣官房が首を縦に振らない気配です。同時期に出された民進党案には関係者会議が入っていましたが、いずれにせよ突然の解散・総選挙で両案は廃案に。仕切り直しです。

関係者会議が入った!

秋の臨時国会には、3本の基本法案が提出されました。
日本維新の会による案、自民党・公明党の与党案、立憲民主党・自由党・社民党が共同で提出した案です。
そして今年の通常国会。
会期中の4月18日、ギャンブル依存症問題を考える会がシンポジウムを開き、ギャンブル問題に関心を持つ与野党議員や無所属の議員が一堂に会しました。主催側の訴えは、とにかく関係者会議を法案に入れてほしいという一点です。依存症対策を政争の道具にせず、超党派で基本法成立にこぎつけてほしいと。
5月10日、与党と日本維新の会が一本化修正案で合意。ここで「関係者会議」が法案に入りました。5月25日に法案は衆院で可決、7月6日に参院可決。

当事者と家族の意見を「十分に聴取する」

基本法が参院で可決されるにあたっては11項目に及ぶ付帯決議がつきました。
注目ポイントは以下です。

国の基本計画策定に際し、広告・宣伝、カジノの入場管理や利用制限、ギャンブル問題の相談窓口、公営競技のインターネット投票のあり方を検討すること。

5月の啓発週間について「新年度に新たに大学生・社会人となった青少年や若い世代に対し(中略)知識の普及に徹底して取り組む」こと。

アルコール、薬物等に対する施策との有機的な連携を図りつつ(中略)ギャンブル等依存症対策を着実に進める予算の確保に努める」こと。

民間団体の取組と地域における公的機関との連携が確保されるものとなるよう、必要な施策を検討する」こと。

「関係者会議の運営に当たっては(中略)ギャンブル等依存症である者等及びその家族の意見を十分に聴取する」こと

今後は、基本法施行→関係者会議→国の基本計画の策定→都道府県推進計画(努力義務)策定という流れとなります。

対策の大きな課題

基本法案が衆院で可決される直前の5月23~24日、衆院内閣委員会で行なわれた参考人の意見聴取で、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子氏はこう訴えました。

「自ら相談に行かれる人たちを、医療や行政がみており、予算のほとんどがそこに使われている」
「DVや自殺未遂を繰り返すなど、否認が強く重篤な問題を抱えた依存症者の家族が、解決法を求め右往左往している。支援にあたる民間団体には予算がつかない」
「ギャンブル依存症の対策は医療・行政モデルではなく、弁護士や司法書士、警察との連携、職場への啓発が必要」

いずれも基本法の対策を具体化していく上での課題です。
さらに根本的な課題も残されています。

諸外国ではギャンブル産業の応益負担(利益から依存症対策費を拠出すること)が常識となっていますが、基本法では事業者の責務として「依存症の予防等(発症・進行・再発防止)に配慮するよう努めなければならない」とあるだけなのです。

関係者会議は、さまざまな事業者の利害が錯綜する場となることも予想されます。
当事者や家族、依存症にくわしい有識者がどれだけ委員として席を占めることができるか、議論の質の分かれ道です。

どうなる「カジノ法案」

20128年7月20日、カジノ設置の基準などを定めたIR実施法が成立しました。
その中身はかなり問題ありです。

たとえばカジノ内でのギャンブル資金貸付。
一定の保証金を払えば2ヵ月間は無利子で貸し付け、返済できなければ14.6%の遅延損害金(利息)がつき、取り立ては外部業者に頼めるしくみです。
……無利子の間に負けを取り返そうと、目を血走らせる依存症者の姿が目に見えるようではありませんか。

カジノの入場料は6000円で、フリードリンク、フリーフードとなったら、三食つきで遊べるわけで、まったく抑止になりません。
月10日までという入場制限も同様です。10日も通う時点で依存の疑い濃厚ではないでしょうか。

救いといえば、ギャンブル対策への「納付金や入場料による財源の活用」や、カジノの周辺自治体を含めた対策を述べた付帯決議がつけられたことです。
これが今後に生かされるよう、「依存症業界」全体の問題として考えていきたいと思います。

 
 


 
 
以上は、季刊『Be!』132号の記事を抜粋・改編したものです。
 
季刊〔ビィ〕Be!132号……特集/高齢者の飲酒問題にどう対応する?
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