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アルコール関連問題

手記

飲酒運転事故遺族・椋樹 立芳さんの手記

椋樹 立芳

追突されて焼死したのに、「加害者」と言われた息子
そして、その間違いを悪用した「市民派」弁護士たち

1990年3月17日、息子の裕之は、一家だんらんの夕食後「明日の朝早く仕事で行くから、寮に戻る」と言って天空へ旅立ちました。「安全運転で行けよ」といったら、彼は「わかっとるよ」と、いつもの笑顔で出発して行ったのが、最後の言葉と、楽しそうな彼の笑顔でした。

私共が就寝して12時ごろ、突然警察からの電話、内容は、私の車の運転手が事故で亡くなったということです。警察は、その時点で誰が亡くなったか不明で、私が心当たりを調べた結果 、私の息子に間違いないと判断し、その旨のことを返事しました。

所轄の警察に着いてから、奥さんは見ないで下さいと言われ、私一人で確認し、息子であることを認めました。遺体を母親が見なかったのが、良かったと思います。見ていれば多分、妻は現在、正常な社会生活ができない状態になってい たと思います。その遺体の状況は、顔面と頭部は骸骨寸前で、手の指は焼け落ち、全身の衣服は全焼し、皮膚は焼損し、赤い筋肉の筋が見えて、とてもこの遺体が息子だとは思えませんでした。

交通課長から「息子さんが追突して焼死した。息子さんはとんでもないことをしてくれた」とぼろくそに怒られ、私共は平身低頭、謝るだけでした。怒るのは当たり前のことで、なぜなら、息子は警官だったのです。遺体の帰宅の段取り中に、追突したという息子の車を見たら、前部の破損は少なく、後部は車体の形はなく左後部の車輪は助手席の下まで食い込んでいました。しかしそれを疑問視する余裕はなく、追突にしては変だなと、その時になぜ思わなかったかと悔いが残ります。

事故は名古屋市内の片側二車線の信号交差点で、赤信号停車中に猛速の車が追突し、計7台が破損した高速道路並の大事故で、その時、変な目撃者がいて、青い車(息子の車)が追突したと警官に証言したので、青い車が加害者と認定され、翌日の新聞やテレビで全国的に「警官が追突」と報道されたのです。ところが事故の翌日に、息子が乗っていた破損した車を警官がよく見ると、追突した車の破損形態でなく、むしろ逆に追突された破損形状であると認定され、再捜査が始まりました。

息子の葬送の翌日、警察に謝罪に訪れたところ、「加害者」なのに応接間に通され、署長自ら「示談の交渉はしないで」と言われ、実は息子さんは加害者ではなく、99%被害者であることが分かったとのことでした。警官が加害者となった事故を180度変更すると、必ずトラブルを招き、二度と間違ってはならないから少し時間を下さいと謝罪されたのです。

真の加害者の車は、飲酒運転で時速92キロ以上の速度で、第二通行帯の前から3台目にいた息子の車の左後部に追突しました。そのまま他車を蹴散らし、息子の車の停止位置より前方に走行し停止して、息子の車は後部が大破し、タンクに引火して全焼しました。

目撃者は、第一通行帯の前から5台目に停車していて、助手席の奥さんの方を見て会話中に、ドンという音で前方を見たら、息子の車が回転して燃えている 衝撃的な状況だけを目撃したのです。実際は、その前の追突した瞬間を直視現認していないのに、警官に「青い車が追突した」とデタラメの証言をしたのです。それに、あまりにもひどい大事故のために警察が捜査を間違ったのです。

加害者が逮捕された翌日に、加害者側の弁護人は不法逮捕冤罪だと警察に抗議し、その旨新聞に記事にさせ、裁判では最初から最後まで、被告に責任はない、私の息子(裕之)が、まず他車に追突し、既に死んでいたと主張、国家賠償を請求する、と他人の間違いを悪用し、最後まで責任を認めませんでした。

被告の弁護人4人は、「名古屋を代表する良心的、市民的社会正義派の弁護士」と評価され、官官接待、選挙定数、情報公開等で大活躍の弁護人で、全国市民オンブズマンの大幹部。 警察は組織の名誉のため、身内の不祥事を隠蔽するために、1ヶ月もかけて、被告に不利な証言を捏造し、有利な証拠を隠し、死亡者には、その逆の証拠を捏造したと主張しました。

また、弁護人側はN大学の原動機が専門のO教授に、事故車を見せないでデタラメの鑑定をさせ、誰が何時つけたか不明の縁石の小さな傷を、息子の車の衝突した傷とか、事故翌日のビデオを持ってるとかデタラメの証言をしました。 公判は一審42回で懲役2年、被告の控訴は棄却4回で確定、6年を経過しました。被告弁護人は終始一貫、この裁判で検察の鼻を明かして、有名になるぞという顔でした。被告の飲酒運転は許されませんが、彼ら弁護人の名誉欲に利用された犠牲者でもあります。私共は、彼ら弁護人に二重三重の不法行為を受けたと認識しています。

最後に、飲酒運転で年間2千人が犠牲になり、現在の法律では増加することはあっても、減少することは絶対にありません。飲酒すれば絶対に運転できない法律にすれば、飲酒事故はゼロになります。恐ろしくて飲酒運転できない法律ならば誰も飲酒運転しません。車で食事に来ている人のほとんどは飲酒運転で帰っていく現状等を、為政者は認識し早急に改善すべきです。