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薬物乱用・依存

タバコの煙は、何万種類もの化学物質の集まりで、成分がわかっているだけで4000種類。体に害があるとわかっている物質は、200種類にもなります。

その中には、依存性のあるニコチン、発ガン性物質がつまっているタール(茶色いヤニのこと)、猛毒の一酸化炭素などが含まれます。

遅れて登場した「依存症」

「ニコチン依存」は薬物依存の一種ですが、アルコール依存などに比べて、「依存」問題として扱われるようになったのは比較的遅く、1970年代になってからです。WHOによる国際疾病分類ICD-9(1977年)に初めてニコチン関連障害が登場しました。

ニコチン依存は他の薬物依存と比べて、「社会的な役割」が損なわれていくことがほとんどありません。そのため、たえずタバコを吸いながらバリバリ仕事をして、何が悪い?――という時代が長かったのです。
しかし、喫煙による関連疾患、周囲の受動喫煙の害があっても、やめられない……。これこそが依存の状態として、徐々に注目されるようになりました。

依存性薬物であるニコチンは本来、中枢神経を興奮させる作用をもちます。ニコチンは神経細胞の受容体に結びつき、神経伝達物質ドーパミンを放出されるといわれます。
一方でニコチンは、神経が興奮している状態では逆に鎮静の効果をもたらします。
このような特徴は、作用時間の短さとあいまって、反復使用から依存に至りやすい原因の一つです。

ニコチン依存にも、他の薬物依存と同様、「精神依存」(吸いたいという強い欲求)・「耐性」(徐々に本数が増えるなど)・「身体依存」(離脱症状が出る)があります。

ニコチンの耐性の特徴は、形成も消失も早いこと。数本の喫煙でも急性耐性が形成され、中枢神経がニコチンの影響に慣れていきます。そして慢性耐性の一部は数時間でも消失するため、朝に喫煙すると効果を強く感じます。

離脱症状としては、タバコへの渇望、焦燥感、イライラ、不安、緊張、抑うつ、集中力の低下、眠気、睡眠障害、食欲亢進などがあげられます。
 

タバコ依存度評価表(ファガストローム、1978)

起床後、何分ぐらいで最初のタバコを吸いますか? a. 5分以内 3点
b. 6分~30分 2点
c. 31分~1時間 1点
d. 1時間以上 0点
禁煙の場所でタバコを我慢するのがつらいですか? a. はい 1点
b. いいえ  0点
1日の喫煙の中で、やめにくのは? a. 朝の最初の一服 1点
b. それ以外 0点
1日に何本吸いますか? a. 31本以上 3点
b. 21~30本 2点
c. 11~20本 1点
d. 10本以下 0点
起床後数時間のほうが、他の時間帯より多く吸いますか? a. はい 1点
b. いいえ 0点
風邪などで寝込んでいる時も、タバコを吸わずにいられませんか? a. はい 1点
b. いいえ 0点

●合計0~3点=依存度は低い
(やめたい気持ちが十分あれば、禁煙は可能)
●4~6点 依存度中程度
(禁煙には、離脱症状への対策を。禁煙外来受診も手)
●7~10点 依存度高い
(禁煙外来などの助けや、日常の工夫で禁煙に取り組もう)

治療と回復

ニコチン依存の治療として、現在では経口禁煙補助薬(チャンピックス)が処方されるようになり、禁煙外来が多数開設されています。
チャンピックスは脳内のニコチン受容体と結合し、ニコチンの作用を妨げるとともに、ニコチンよりもごく弱い刺激作用をもたらすことで離脱症状をやわらげます。

ニコチンの離脱症状は、禁煙後一週間ほどがピークです。
その後数ヵ月にわたって散発的な症状の出現がみられ、さらに喫煙中止後10年近くにわたって衝動的なニコチンへの欲求がときに出現するといわれます。
その背景には環境による刺激が関わっていると考えられ、依存からの回復を続けるには生活パターンや環境の再構築が役立ちます。

身体への害について

ニコチンが身体に及ぼす作用

タバコを吸うと、肺から吸収されたニコチンは、おおよそ7秒ほどで脳に到達します。
ニコチンの刺激を受けて、血管は収縮し、心拍数は40%も増えます。収縮した血管が元に戻るのには約30分もかかるため、心臓に大きな負担をかけることになります。
また、ニコチンは猛毒でもあります。
3ミリグラムのニコチンで、3000グラムの新生児が死に至るほどの毒性があるのです。

タバコに含まれるその他の有害物質

「タール」は、真っ黒なドロドロの液体で、4000種類ほどの化学物質の集まりです。
遺伝子を傷つける発がん性物質も含まれています。
「一酸化炭素」は、血液の中で酸素を運ぶヘモグロビンと結びつきやすいのが特徴です。
一酸化炭素と結びついたヘモグロビンは酸素を運ぶことが出来なくなってしまうため、タバコを吸うと身体が酸欠の状態(頭がぼーっとする)などが起きるのです。もちろん、この一酸化炭素も有毒です。

副流煙が他人に及ぼす作用

主流煙は、タバコを吸っている人が吸いこむ煙。
副流煙は、火がついたタバコの先から立ちのぼる煙のことです。
実はこの副流煙は、主流煙の何倍も有害です。つまり、タバコを吸うと、吸った本人が害を受けるだけでなく、まわりの人も深刻な害を受けることになります。

副流煙はどれだけの害があるか

ニコチン 主流煙の2.8倍
タール 主流煙の3.4倍
ベンズピレン(発がん物質) 主流煙の3.9倍
一酸化炭素 主流煙の4.7倍
カドミウム 主流煙の3.6倍
アンモニア 主流煙の46.3倍
窒素酸化物 主流煙の3.6倍

出典:「たばこで他殺、たばこで自殺」宮崎恭一著 女子栄養大学出版部 2000年

今、初めてタバコが発見されたら

タバコが世界中に広まってから、約500年が経過していますが、科学的に害があることが確認されたのは、ほんの80年前です。
もしも今、初めてのタバコが発見され、商品として売り出そうとしても、販売はとうてい認可されないのではないでしょうか!

タバコをやめれば、ガンの発生率も、心臓発作の発生率も下がります。
たとえば、禁煙して4年で肺がんのリスクは半分に、5年以上の禁煙で3分の1まで下がります。