〜前回までのあらすじの解説〜
シラーフたちが活躍する世界は人の体内です。
さて、その体内ではいったいなにが起こっているのでしょうか?

【シンゾウ町の異常な振動】
心臓には、右心室と左心室の間あたりに、「中隔」と呼ばれる場所があり、ここで心臓全体のコントロール(歩調取り)が行われています。心臓の筋肉は自動的に収縮しますが、放っておくとバラバラになってしまうので、「中隔」のような部分が必要となるわけです。中隔に来ている神経の接合部分に、カテコール・アミンが大量に働いて、異常な鼓動を生み出したわけです。
 この人はお酒を飲んだため、肝臓でアルコールがアセトアルデヒドに分解され、このアセトアルデヒドが副腎に働いて、心臓の鼓動をコントロールしている神経がある部分に、必要以上のカテコールアミンを注ぎ込みました。そのために鼓動が異常に速くなったわけです。

【イブクロ広場の大渋滞】
 さて、シラーフは心臓から動脈血管を通って胃にやってきました。食べ物が口から入ると、食道を通り、噴門を通って胃に入ります。噴門は食べ物が逆流しないよう、一方通行になっています。また、胃には、十二指腸につながる幽門という出口があります。
 この人は飲みながらいろんな物を食べましたが、アルコールの影響で胃の運動を刺激する自律神経が蔗断されてしまい、胃は運動せず、幽門も開かず(赤信号)、結局、胃の中に食べ物がどんどんたまってしまいました。(交通渋潜)こうなると胃はムカムカし、食べ物を吐いてしまうのです(大地震)。何度も吐くと、噴門が裂けて出血することがあります。
 また、強いお酒を飲むと、胃の粘膜がはがれ、炎症を起こします(広場のレンガがはがれ、赤い地肌が露出)。これを「びらん」といいます。ひどい時は出血を起こし、吐血することがあります。

【20年後の体内の異変】
 20年後の体内で、胃腸通りは、アルコールによって吸収障害を起こしていて、水分や栄養分などが吸収されずにグチャグチャになっていました。この人は慢性的な下痢状態に陥っているらしく、臭いもします。
 胃袋広場は急性胃炎(出血性びらん性胃炎)または胃潰瘍などによって手術され、幽門より上の胃の3分の2が切られてしまいました。つまり胃の上部の3分の1と十二指腸が直接つながっているのです。大きなヒビは手術の跡です。
 門脈も相当な被害を受けています。血管の壁にはコレステロールがたまり、固くなり、デコボコしています。動脈硬化を起こしつつある状態で、このまま進むと、血管がつまってしまいます。脳の中で同じようなことが起こると、命にもかかわります。
 肝臓は脂肪がたまって肥大化しています。これを脂肪肝といいます。お酒を飲みすぎますと、肝臓はアルコールを先に先に分解しようとするため、脂肪を分解する余裕がなくなり、そのまま肝細胞の中に黄色っぽい中性脂肪となってたまってしまうのです。
 しかし、もっと恐ろしいことが起きつつあるようです。肝硬変です。アルコールによって狂わされたリンパ球が肝細胞を攻撃して殺してしまうと、そのあとは細胞と細胞とをつなげている固い線維組織に置き換わるのです。これがどんどんふえると肝臓は固くなり、やがて小さくなっていきます。これが進むと肝臓の重要な役割である解毒作用ができなくなリ、人間はやがて意織障害などを起こして死んでしまいます。

【シンゾウ町の不規則な揺れ】
 アルコールをたくさん飲み続けると、心臓の筋肉に異常を生じることがあります。アルコール性心筋症といいます。左心房、左心室が肥大しますが、内側が広がるというより筋肉の壁が厚く大きくなって、そのため弾力性を失います。そうなると、心臓の収縮作用が弱くなり、血液の流れが悪くなります。とくに、肺に血液がたまると、胸が苦しくなります。これが心不全です。肺町へ行く地下鉄肺動脈線と肺静脈線の渋滞がこれをさしています。不整脈も起きます。ドクンドクンという規則正しいリズムが突如、ドンドンドット……トンと不規則になります。アルコールの直接の影響だけでなく、アルコールばかり飲むことによって栄養のバランスが失われたり、あるいは下痢によって心臓のリズムを保つのに必要なカリウムなどが流れ出て不足したりするためといわれています。

【脳特別地区の光の乱舞】
 さて、シラーフはいよいよ脳の中に入りました。生きている人の脳の中がどんな風になっているのか、見たことがありませんので想像で書きました。脳の神経細胞には電気信号が飛びかっているとの説をもとに、きっと雷のような光と音が走っているのだろうと考えました。

【セイノウ池の異常事態】
お酒を飲みすぎますと、睾丸が小さくなります。その理由は、コーガンの機能維持に大事な役目を果 たしているテストステロンという男性ホルモンがつくられにくくなるからです。さらに肝臓が肝硬変でやられると、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが多くなります。そのため男性の場合、体は女性化し、乳房がふくらんできたりします。また、精子の形成には、アルコール脱水酵素(ADH)が手伝いをしていますが、アルコールの分解のためにADHが奪われ、そのため、精子の数も滅ってきます。また、精子を運ぶ輪精管の直径が小さくなり(小川の流れが細くなった)、精のうの重量 も低下します。つまり小さくなります。性欲は減退し、ひどい場合はインポテンツになってしまいます。女性の場合は、卵巣の重量 が少なくなることが確かめられています。

【女性の体内へ……】
 さて、セイノウ池を散歩していたシラーフは、性交による射精によって女性の膣の中に流されました。女性の体という全く別世界につれていかれてしまったわけです。女性の体の地図は、タイム・トラベル号にはありませんので、シラーフには現在位置の確かめようがないのです。精子(魚)の多くは、膣内部で死にます。100匹に1匹くらいの割合いで生きのこり、さらに奥の子宮(広い空間)へと進みます。

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