大学生の急性アルコール中毒の背景

飲酒後の水死や転落死等も含めると、2008年から2017年までの10年間で27人の大学生の命が失われています。
※状況については、「急性アルコール中毒等による大学生の死亡事例2001~」をご覧ください。
※遺族の手記は「手記」をご覧ください。

学生の急性アルコール中毒の背景には、次のような問題があります。
つまり、どんな飲み会も事故が起きる危険をはらんでいて、男女を問わず、学生への呼びかけが必要だということです。

1.背景にある危険な飲み

  • 学生の日常の中に、「吐くこと」「酔いつぶれること」を前提とする危険な飲みが存在している
  • 場の空気や上下関係による暗黙の強要があり、特に卒業・新歓コンパ、合宿、寮ではその傾向が強くなる(しかし、打ち上げや普段の飲み会、誕生会などでも死者が出ている)
  • 未成年の飲酒も公然となっていて、1年生がアルハラのターゲットになることが多い(ただし、上級生の死者も出ている)
  • 酔いつぶれた者を放置したり、途中までは見ていたとする状況がよく見られる。救急車を呼ぶのを躊躇し、手遅れにしてしまうこともよくある

2.救急搬送数が増加

東京消防庁のデータから長期的な推移を見てみると――
一時は減少していた急性アルコール中毒の救急搬送数が再び上昇傾向にあり、2003年のピーク時を超えたことがわかります。その約半数が20歳未満と20歳代です。
「短時間で、つぶれるほどの量を飲む」といった本来なら危険な飲み方が、若者の間でスタンダードになっていると推察できます。

急性アルコール中毒による救急搬送人員(東京消防庁のデータより)
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3.女性も例外ではない

かつては酔いつぶされるのは男子のみでしたが、今は女子も例外ではありません。
2016年は女性を泥酔させて暴行するなど、女子学生が被害にあう報道が目につきました。
下記のグラフは、東京消防庁が公表している平成28年の「年代別の急性アルコール中毒による救急搬送人員」をまとめたものです。
大学生が多く含まれる「20歳代」は、他の年代に比べて搬送人員が多く、全体の43%を占めます。
20歳代を男女比でみると、女性は42%にもおよび、10人中4人は女性です。

平成28年(2016年) 年代別の急性アルコール中毒による救急搬送人員
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大学で実践していただきたい防止対策

アルハラの「伝統」は上級生から下級生へ引き継がれています。2012年5月にはじめて文部科学省から各大学に「飲酒事故防止を求める通知」が出され、その後継続して通知が出されています。
キャンパスを安全な場にし、これ以上の死者を出さないため、大学には管理と教育の両面での徹底した防止対策を、強く要望します。

  • さまざまな機会をとらえて、アルコール予防教育や啓発キャンペーンを実施する
  • ハラスメント対策の中にアルハラをきちんと位置づけ、予防・相談体制を整える
  • 未成年者に飲酒をすすめることを禁止する
  • イッキ飲み、飲み比べ等の危険な飲酒を禁止する
  • 保健体育などの授業で、改めてアルコールについての教育を行なう
  • サークル等の幹部・顧問に対して予防研修を実施する(酔った人への介抱の仕方も含めて)
  • 「酔いつぶし」など危険な飲み会を行なうサークル等を指導する(補助金カットも含めて)
  • このような事態が起きた場合、聞き取った飲み会の状況をきちんと公表し、問題点を指摘したうえで、断固たる態度で臨むことを学生に伝える(情報を隠さず発信・共有することは、再発防止に不可欠です)
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