HOME
 
アルコール健康障害対策基本法
 
アルコール依存症
 
うつ・自殺とアルコール
 
薬物乱用
 
イッキ・アルハラ
 
飲酒運転
 
AC
 
妊娠とアルコール
 
予防プログラム
 
自分らしく生きるための道具箱
 
アスク・キッズ
 
アルコール・ルパンを追え!
 
ASKの本
 
目次
 
キーワード
 
●日本の若い女性の飲酒
旧総理府世論調査によると、20代の女性の飲酒率は1968年には24%でしたが、87年には54%と2倍以上の伸びを示しています。健康体力づくり財団の1996年の調査でも55.2%です。東京都の調査をみると、20代の女性の飲酒は2000年には74.8%。2003年の厚生労働省の調査ではついに80%に至り、男性に伍して飲んでいることがわかります。[アメリカの妊娠可能年齢の女性の飲酒率(18〜44歳)は50%強。いまや日本の女性ほうが飲酒率は高いのです]
 
日本の女性の年代別飲酒率に関する調査
旧総理府世論調査 1968・87
- 20代 30代 40代 50代 60代
1968 24.0% 22.3% 18.6% 14.9% 9.0%
1987 54.1% 58.9% 44.0% 34.2% 26.0%
 
健康体力づくり財団調査 1996
- 20代 30代 40代 50代 60代
1996 55.2% 52.0% 40.2% 43.4% 26.2%
 
東京都の健康に関する世論調査 1997・2000
- 20代 30代 40代 50代 60代
1997 69.8% 73.2% 67.5% 55.0% 40.7%
2000 74.8% 67.5% 63.2% 51.9% 34.5%
 
厚生労働省研究班調査 2003
- 20代 30代 40代 50代 60代
2003 80.0% 80.7% 75.1% 68.2% 53.5%
 
●乳幼児身体発育調査
http://rhino.yamanashi-med.ac.jp/sukoyaka/chart308.html
 
●警告表示
アメリカでは、アルコール飲料のラベルに以下の警告表示をつけることが法律で義務づけられています。
<政府警告>
(1) 公衆衛生局長官によると、先天性障害の危険性があるため、妊娠中の女性はアルコール飲料を飲んではいけません
(2) 飲酒は、車の運転や機械操作についてのあなたの能力を損ない、健康問題を引き起こす可能性もあります
また、アメリカの公衆衛生局長官からは、以下の勧告が出されています。
<アルコールと妊娠に関する公衆衛生局長官の勧告>
公衆衛生局長官は、妊娠中の女性(あるいは妊娠の可能性のある女性)は、アルコール飲料を摂らないよう、さらに、食品や薬品のアルコール含有量を認識するよう勧告する。
ASKでは、日本でも、妊娠と飲酒に関する警告表示を容器や広告につけるよう酒類メーカーなどに要望。2004年5月、ビール酒造組合が自主的に「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」との警告表示をつけると発表。その後、日本洋酒酒造組合・日本ワイナリー協会・日本蒸留酒酒造組合も同様の文言の採用を発表しました。日本酒造組合中央会は「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがありますので、気をつけましょう」という文言を採用。

アメリカの政府警告
日本の政府警告
 
●胎児性アルコール症候群(FAS)と
 胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)
妊娠中に多量に飲酒した母親から生まれた子どもに、(1)特徴的な顔貌(不明瞭な人中/薄い上唇/短い眼瞼裂など) (2)発育の遅れ (3)中枢神経の問題 という3つの兆候が現われる例が1960年代末から報告され、1973年に「胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome = FAS)」と名づけられました。
さまざまな調査が行なわれた結果、アメリカでは現在、新生児1,000人あたり1〜2人のFAS児が生まれていると言われます。ことに、飲酒問題が急激に深刻化した先住民(イヌイットやネイティブ・アメリカン)の間ではFAS児の出生率がさらに高く、たとえばアラスカ先住民では1000人あたり5.6人なっています。各国での調査から、国や民族に関わらず、女性がアルコールを乱用する社会ではFAS児の出生が避けられないことが明らかになっています。〔日本では1991年に、1000人に0.1〜0.05人と推定(田中晴美ら)されましたが、その後は調査が行なわれていません〕
一方、FASにみられる特徴的な顔貌がなくても、胎児期にアルコールにさらされたことによる中枢神経の問題(刺激への過反応・注意力の問題・変化への適応困難・学習障害・判断力の問題など、行動障害として現れる)を抱えた子どもたちの存在が注目されました。アルコールに関連するさまざまな身体の障害(心疾患・関節の形成異常など)も浮かび上がっています。そのため「胎児性アルコール作用(Fetal Alcohol Effect = FAE)」「部分FAS(Partial FAS)」「アルコール関連神経発達障害(Alcohol-Related Neurodevelopmental Disorder = ARND)」「アルコール関連先天性障害(Alcohol-Related Birth Defects = ARBD)」などの用語や診断名が使われるようになりました。
こうしたアルコールによる胎児の障害を連続的にとらえる概念として登場したのが、「
胎児性アルコール・スペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders =FASD)」です。「問題は顔ではなく、脳である」という視点の転換が、その背景にあります。FASに特徴的な顔貌は、胎児の器官が形成される妊娠初期に大量のアルコールにさらされたためと考えられますが、脳は妊娠全期間を通じて発達を続けます。目に見える障害がなくても、脳がアルコールの影響を受けた結果、さまざまな行動障害となって現われる例は少なくないのです。
(エドワード・ライリー博士の講演をもとにASKで構成)
 
●個人差が大きいアルコールの影響
 アルコールが胎児にどれほどの影響を与えるかは、飲酒量だけでなく、母親の年齢・出産回数・栄養状態・体重・飲み方・アルコールへの感受性・喫煙の有無などによっても変わってくると考えられ、今も研究が続けられています。実際、上の子より下の子に障害が重く出るケースがよく見られます。
胎児のアルコールへの感受性も、カギとなっているようです。双生児のケースで、同じ量のアルコールにさらされていたはずなのに、一人は影響を強く受け、もう一人はさほどではない、ということもあるのです。
 飲み方としては、血中アルコール濃度が高くなるほど(早いピッチで飲む、強い酒を飲む、空腹時に飲む、大量に飲むなど)胎児へのリスクは高まるだろうと考えられていますが、食事をしながらゆっくり飲めば安全という保障はありませんし、安全量もわかっていません。
このようなわけで、今のところ、「安全のため、妊娠中は飲酒しないようにしましょう」としか言いようがないのです。
 ただし、妊娠中に飲酒したら、即、子どもに障害が出るということでもありません。何の影響もない場合もあること、だからと言って、次の妊娠でも飲んで大丈夫というわけではないことを覚えておいてください。
(エドワード・ライリー博士の講演をもとにASKで構成)
 
●妊娠の週数と胎児の発達
 胎児の器官や臓器が形成されるのは、主に妊娠初期です。ただし脳は妊娠全期間にわたって成長を続け、ことに妊娠後期には一生のうちもっとも盛んに発達します。
胎児の発達におけるアルコールの影響
(デブラ・エベンセン氏の資料をもとにASKで構成)
 
●アルコールが胎児の脳に与える影響
 MRIなどの画像診断によって、アルコールが胎児の脳にどんな影響を与えるかが明らかになってきました。胎児性アルコール症候群(FAS)の診断基準を満たしていなくても、妊娠中にアルコールにさらされた子どもに同じような影響が見られることもわかっています。
 まず判明したのは、脳全体の体積がアルコールの影響を受けていない子どもに比べて小さいことです。わずかではありますが、有意な差があることが確認されました。そして研究が進むにつれ、脳の中でも特に影響を受けやすい部位が特定されつつあります。
 ひとつは脳梁です。これは左右の脳をつなぎ、両者のバランスある働きを支えて複雑な状況への対処を可能にしています。アルコールの影響によって、この脳梁の変形や萎縮が起こるだけでなく、脳梁がまったく存在しない場合もあることがわかりました。
 次に小脳です。運動やバランス感覚を司るだけでなく、注意力・集中力にも関わっています。アルコールの影響により小脳の体積が減少していること、中でも小脳虫部と呼ばれる領域の萎縮が激しいことがわかっています。
 また、大脳基底核の体積減少も報告されています。特に、尾状核に萎縮が目立ちます。前頭葉―尾状核・被核―淡蒼球―視床をめぐる神経回路は、物事の計画を立てて行動するという「実行機能」を司っています。大半のFAS児はIQが正常範囲であるにもかかわらず、与えられた課題を実行するにあたってさまざまな困難にぶつかります。それは、実行機能を司る回路の問題が大きいと考えられています。
 こうした脳の萎縮や形状のゆがみは、さまざまな行動上の障害(刺激への過反応・注意力の問題・変化への適応困難・学習障害・判断力の問題など)として現われてきます。もともと脳というのは非常に傷つきやすい臓器であり、アルコール以外にも、妊娠中のさまざまな状況、生後の栄養状態や感染、外傷などによって影響を受けます。けれど大事なことは、アルコールによる脳への影響は、飲酒さえしなければ100%防げるということです。
(エドワード・ライリー博士の講演をもとにASKで構成)