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目次
 
飲酒運転 懲戒処分事例の分析
 

2007年4〜10月にYahoo/Googleのニュースに掲載された
飲酒運転による懲戒処分事例を分析

2007年11月26日
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
飲酒運転対策特別委員会

 
厳罰化の中で、飲酒運転によって懲戒処分される人が後を絶ちません。
……いったいどのような状況の中で飲酒運転に至ったのか。 
効果的な対策を講じるためには、実態を探る必要があります。
ASK飲酒運転対策特別委員会(委員長・山村陽一)では、報道をもとに、さまざまな角度から事例を分析しました。その結果、見えてきたものは……?
 
<処分者のプロフィール>
■2007年4〜10月の7ヵ月間にYahoo/Googleのニュースに掲載された飲酒運転に関する報道から、「懲戒処分事例」を抜き出したところ113例あった。
■自治体職員・教師・消防・警察・自衛隊など公務員が9割超なのはニュース性が高いため。水面下には報道されないケースが膨大にあるものと思われる。
■過半数の58例が「免職・解雇・解任」で、8月以降に半数を超え、10月には7割に至っている。事故を起こしていない初犯の酒気帯び検挙で免職処分になったと見受けられる事例が12あり、福岡市職員による3児死亡事故から、自治体が職員への制裁を強めている状況がうかがえる。
■年齢別に見ると、40歳以上の中年層が6割以上。50代が最多の35例。
■性別では、男性が109例、女性4例。
■乗用車が大半ですが、バイクが8例、自転車も1例あった。

自治体職員 教員 警察 自衛隊 消防 司法関係 議員 その他民間 合計
49 25 11 9 8 4 2 5 113
※網掛けは公務員
10代 20代 30代 40代 50代 60代 合計
1 19 25 30 35 3 113
 
<飲酒運転に至った状況>
1)飲酒状況について何らかの記述がある事例の中で目立つのは、飲酒後すぐではなく時間を置いたケースで41例。多いのは次の3つのパターンである。
「仮眠・休憩後に運転」「代行などで一旦帰宅後に外出」「翌朝酒気が残る」
 ……たとえば
上司や同僚と居酒屋で飲酒後、車内で6時間仮眠し運転、検挙(中学教諭・懲戒免職)
会合で飲酒、車内で4時間仮眠。翌朝出勤時にガードレールに衝突(小学校教頭・懲戒免職)
バーベキューで飲み、代行でいったん帰宅、2時間後に外出し追突(自衛隊員・停職20日)
友人と旅先ではしご酒、9時間後の翌朝、車線変更違反で職質(県立病院職員・懲戒免職)
送別会から家族の車で帰宅。翌朝、日課のジョギングの後、シャワーを浴びて車で出勤途中に職質(税務課長・停職1ヵ月)
飲酒後タクシーで帰宅、6時間後の翌朝タクシーで車を取りに行き運転(中学教諭・停職6ヵ月)
★「飲みすぎ」と、アルコールについての「知識不足」が背景にある!
 
2)アルコール依存症が疑われるケースも多い。
情報が限られるため判断が難しいが、飲酒状況の異常さ(朝や勤務中、車中)・酒量の多さ(呼気濃度の高さ)・飲酒運転の常習性・再犯性・病気休暇中の酒気帯びなどの状況からみて26例。詳細な記載があれば数はもっと増えるだろう。
……たとえば
勤務中日本酒5合飲酒、帰宅途中に縁石・照明灯に接触(高速道路職員・諭旨解雇)
コンビニでカップ焼酎4本買い車中で1本飲酒、トレーラーに衝突(高校教諭・懲戒免職)
酒気帯び検挙で免停中に消防車を運転、再度の酒気帯び検挙(消防職員・懲戒免職)
自宅で午前中ウィスキー水割り5杯、中央線はみ出し正面衝突(自動車教習所指導員・解雇)
午後3時から自宅で焼酎水割り4、5杯飲み、路肩に脱輪 0.65mg/l(県職員・懲戒免職)
勤務中私用外出し、車中で缶チューハイ500mlを5本飲み追突事故(小学校教諭・懲戒免職)
朝から飲食店と酒店で焼酎お湯割5杯飲みオートバイ運転。0.55mg/l(警察官・懲戒免職)
病気休暇中、自宅で午前2時半から焼酎3合飲み就寝。午後1時検挙(中学教諭・停職7ヵ月)
★依存症には治療と断酒が必要! 職場は早期発見・治療をすすめる対策を!
 
3)目的地が至近距離のケースも13例あった。
……たとえば
休職中、自宅で飲酒後、500メートルはなれた店に向かう途中で追突(高校教諭・停職6ヵ月)
自宅で飲酒後、レンタルビデオ店へ、踏み切り一時停止をせず職質(高校教諭・停職6ヵ月)
未明自宅で飲んでうたた寝、午前3時にコンビニへ、電柱・車に衝突(小学校教諭・懲戒免職)
同僚と飲酒後、最寄り駅に迎えに来た家族と自宅近くで運転交代(地検事務官・減給6ヵ月)
代行業者がわかりやすいよう、駐車場から表通りまで車を出して検挙(消防職員・停職3ヵ月)
飲酒後代行で帰るが、自宅手前のコンビニから700m運転(市職員・懲戒免職)
一緒に飲酒していた女性の同僚の車を別の駐車場に移動(小学校講師・懲戒免職)
自宅で飲酒後、ゴミ捨て場まで生ゴミを捨てに行くため1キロ運転(市職員・停職5ヵ月)
代行で帰宅。未明にコンビニへ。蛇行運転をパトカーに発見(県立病院看護師・懲戒免職)
温泉施設で飲酒しバスで帰宅。家族と口論。車で外出、近くの空き地に停車ししばらく仮眠。
 帰宅途中に検挙(県職員・停職6ヵ月)
★近さへの油断と、車と飲酒の両方が定着した生活それ自体が落とし穴に!
 
4)自宅で飲んで飲酒運転に至ったケースが22例。
 ……たとえば
休みに日中自宅で飲酒、夕方娘を迎えに行き、停車中の対向車に接触(警察官・懲戒免職)
自宅で飲酒し、友人宅へ向かう途中、ブロック塀に接触(市職員・停職6ヵ月)
自宅で飲酒していたところ、急用ができ運転、速度オーバーで検挙(市職員・停職4ヵ月)
自宅で飲酒後、マンション駐車場でギアを過ってバックに入れ駐車の3台に衝突(警察官・懲戒免職)
自宅で飲酒後、近くのスーパーで買い物、帰宅途中追突(市防災安全公社理事長・解任)
午前中自宅で飲酒、畑に行く途中、道路脇の倉庫に衝突(市職員・懲戒免職)
自宅で午後1時から1時間飲酒後、2時間仮眠をとり入浴後に運転、検問(警察官・懲戒免職)
★飲酒運転に結びつく日頃の飲酒習慣、生活の見直しが必要!
 
5)飲酒量の記載がある事例では、多量飲酒が非常に目立つ。これだけ飲めるということは、耐性形成(習慣飲酒によって脳がアルコールに慣れ、酒量が増加すること。アルコール依存症の徴候の1つ)ができているということ。
……たとえば
ビール中ジョッキ7杯、焼酎水割り2〜3杯(高校講師・解職)
ビール中ジョッキ4杯と中ビン5〜6本(小学校教頭・懲戒免職)
ビールジョッキ2杯、日本酒4、5合、カクテル数杯(地裁職員・停職3ヵ月)
ビール大ジョッキ1杯、焼酎ロック5杯(市職員・停職1ヵ月)
ビール中ジョッキ2杯、日本酒5合(警察官・懲戒免職)
ビールジョッキ7、8杯、泡盛の水割り1杯(中学教諭・停職6ヵ月)
焼酎お湯割10数杯、ビールジョッキ3杯とコップ約15杯(拘置所看守・停職1ヵ月)
ビール2杯、焼酎3杯、ウィスキー2杯(市職員・懲戒免職)
ビール2本と焼酎5杯(市バス運転手・懲戒免職)
★多量に飲む習慣が、飲酒運転の背景に
 
「免許取消処分者で飲酒運転経験者の6割が日本酒換算3合以上の飲酒者
(樋口進・神奈川県警2007)」との報告を裏づける内容です。
 
<飲酒運転防止に必要なこと>
 

■今回の分析で浮き彫りになったのは、飲酒運転につながる「飲酒習慣」を変える必要性である。職場は、懲戒免職・解雇を強行する前に、「アルコール教育と節酒の指導」と「依存症の早期発見と回復を支援する体制づくり」を行なうことが急務である。
■「根本的な対策」としてぜひ提案したいのは、
 1. 予防のためにまず、職員・社員への「アルコール教育」を行なう
 2.多量飲酒を奨励するような職場風土がある場合はあらためる
 3. 酒気帯び検挙が起きた場合は、一発解雇ではなく、初回は停職などの処罰にとどめ、
アルコール専門機関への受診を義務づける
なぜなら、飲酒運転をした職員を職場から排除しても、その人の飲酒習慣が変わらないかぎり、飲酒運転は引き続くからである。
■違反者教育も非常に重要である。とくに、依存症者に対しては、検挙をきっかけにして治療につなげ、断酒継続をサポートする社会的システムが欠かせない。
■多量飲酒はさまざまな問題の原因となっている。飲酒運転防止の切り口から「アルコール教育」と「飲酒習慣の見直し」を推進すれば、アルコール依存症だけでなく、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防にもなり、うつや自殺などのメンタルヘルス対策にもつながって、職場にとっても社会にとっても一挙両得の施策となる。

ASKは、職場や地域での「アルコール教育」推進をサポートするため、教育用DVDを制作するとともに、このDVDを用いた研修を行なう「飲酒運転防止インストラクター」の養成に取り組む。