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目次
 
 基本計画案まとまる
ASK通信 61号(2016年3月10日)より・一部改編
 
「異議なし」

 野越え山越え、ようやくここまで来ました!
 2月10日、第14回のアルコール健康障害対策関係者会議が行なわれ、基本計画案がまとまりました。
 まずは前回出された意見にもとづく修正などについて事務局から説明があり、会議開始から15分ほどで樋口進会長(久里浜医療センター院長)による採択へ。
 傍聴していた側としては、心の中でパンパーン! とくす玉が割れたぐらいのシーンでしたが、そこはさすがに国の会議、粛々と進みます。「異議なし」の声に続き、ひそやかな拍手が起こりました。
 今後はこの案をもとに、省庁間での調整が行なわれ、パブリックコメントの募集も。そして5月末までには閣議決定と、国会への報告が行なわれる予定です。
 なお、この基本計画は第一期で、来年度から5年間を対象としています。その達成状況を評価した上で、第二期の基本計画が策定されます。
 全29ページにわたる基本計画案ですが、大きく分けると次のようになります。


●意義を述べた部分
位置づけ、基本理念、基本的な方向性など
●重点課題
多岐にわたる施策の中で、ポイントとなる項目と、数値目標
●基本的施策
基本法に挙げた10の分野ごとの具体的施策
●推進体制等
今後、都道府県などで計画を策定し対策を継続していくために必要なこと
 以上のうち、「重点課題」の項目を3ページに抜き出しました。項目ごとにざっとご説明します。

正しい知識を広める


【重点課題1】の(1)は、未成年者、妊産婦、若い世代に対して飲酒の影響を正しく伝える施策を述べています。学校教育、保護者や教職員への啓発、関連行事などとともに、テレビCMの自主基準を見直すことなど事業者にも取り組みを求めているのが特徴です。
(2)では、アルコール依存症について次の二点の啓発を行なうとされています。
「アルコール依存症は、飲酒をしていれば、誰でもなる可能性があること、飲酒をコントロールできなくなる精神疾患であること、治療や断酒に向けた支援を行うことにより十分回復しうること」
「アルコール依存症の当事者やその家族がアルコール依存症の問題に気付くことができるよう、アルコール依存症の初期症状等の情報」

 こうした内容が国の基本計画で明文化されたのは画期的です。さらに「自助グループ等と連携し、アルコール依存症の回復者が体験談の講演等を行う社会啓発活動の活用を図る」との但し書きも。
(3)の目標は「生活習慣病のリスクを高める量(男性は日本酒換算で1日平均2合以上、女性は1合以上)を飲酒している者の割合を、男性13.0%、女性は6.4%まで減少させる」など、第二次健康日本21の目標と同様ですが、基本計画の目標としてマスコミでも報じられるなど、注目を浴びる効果は大です。
介入・相談〜回復支援
【重点課題2】の(1)は早期介入です。ブリーフインタベンションなどの調査研究、特定保健指導でアルコール依存症が疑われる者を専門医療につなげること、地域モデル確立に向けた人材育成などについて触れています。
(2)は相談です。
「精神保健福祉センターや保健所等を中心として、アルコール健康障害を有している者及びその家族が分かりやすく気軽に相談できる相談拠点を明確化し、広く周知を行う」
と明記されました。
(3)は地域での連携。次のように述べられています。
「精神保健福祉センターや保健所等を中心として(中略)地域における医療機関・行政・自助グル―プ等の関係機関の役割を整理し、地域の実情に応じた連携体制を構築する」
「飲酒運転や暴力等の場面で、当事者にアルコール依存症等が疑われる場合には(中略)、必要な治療や断酒に向けた支援につながるよう関係機関との連携を推進する」
「内科や救急など、アルコール健康障害を有している者が受診していることが多いと考えられる一般医療機関と、専門医療機関との連携を促進する」

(4)では研究・治療・人材育成の中心となる全国拠点を定めること(久里浜医療センターにおかれる見込み)、地域の専門医療機関の整備について述べています。
(5)に挙げた目標は、(2)の相談拠点と(4)の専門医療機関を、全都道府県で一箇所以上定めるというもの。

舞台は都道府県へ

 次の焦点は、都道府県の計画作りです。
 基本計画案の中でそのことを述べた「推進体制等」の項目は、最後まで議論となりました。
 1月の会議で、「都道府県計画を策定することが望ましい」「施策を明示することが望ましい」「対策を継続していくことが望ましい」という表現が弱すぎる、と委員から意見が出されていたのです。
 アルコール問題議員連盟の働きかけもあり、修正された文言は「都道府県計画を策定する必要がある」「施策を明示することが重要である」「対策を継続していくことが重要である」と、ぐっと前向きに。
 なおここでは、「都道府県や政令指定都市を中心とした地域としての一体的なアルコール健康障害対策への取組が必要である」とし、地域で関係者の「会議を開催すること等」により目標を設定することや、その後も協議の場を設けて「対策を継続」するよう、強く推奨されています。

異例づくしの道のり

 基本計画案ができるまで、1年5ヵ月にわたり、14回の関係者会議と12回のワーキンググループが開催されました。この開催数も異例ですが、さらに、関わった関係省庁の数も異例です。
 内閣府はアルコール健康障害対策担当と自殺対策担当、男女共同参画の3部局。
 法務省は矯正局と保護局。
 国税庁の酒税課。
 文部科学省は高等教育局の3課と初等中等教育局。
 厚生労働省は健康局健康課、社会・援護局の精神・障害保健課をはじめ、労働衛生課、家庭福祉課、母子保健課など全11課。
 警察庁は交通企画課や生活安全企画課など4課。
 国土交通省は安全政策課など2課。
 総務省は消防庁。
……以上の全28部署の担当者が、関係者会議やワーキンググループに参加し、基本計画づくりに関わりました。

キーワードは「連携」

 採択後に委員たちが一言ずつあいさつ。ASKの今成はこう述べました。
「基本計画案に使われている単語を検索したところ、『連携』が63もあり、連携に重きをおいた計画だというのがわかります。省庁間の連携、地域での連携あってこその基本計画です」
 熱い言葉が続きます。
「予算、人材、研究に期待したい」(猪野亜朗委員・かすみがうらクリニック)
「自助グループにとっては、これからが本番。地域の連携を進めていきたい」(大槻元委員・全断連)
「相談支援の分野は研究が少なく、座長としてどうなるかと思ったが、手ごたえのある計画ができあがった」(田辺等委員・北海道精神保健福祉センター所長)
「元野球選手の覚せい剤事件報道でも、依存症への偏見はまだ強い。基本計画で正しい認識が広まってほしい」(月乃光司委員・依存症当事者)
「この会議を通じて、保健所に皆さんが何を期待しているのか、何ができていなかったのかを実感した。連携の核として努力していきたい」(中原由美委員・保健所)
「若い医師がアルコール臓器障害の研究をやりたいと思うような環境整備を」(堀江義則委員・内科医)
「依存症は飲酒を続けていれば誰でもなる病気、と基本計画に書かれたのが画期的」(松下年子委員・看護学教授)
「今後五年間、次につながるエビデンスを作ることが健診・医療の最大の課題」(杠岳文委員・肥前精神医療センター院長)
「個人ではなく社会全体の問題だと改めて認識した。それを心に刻んで子どもたちの教育にあたりたい」(渡邊祐美子委員・高等学校教頭)
「委員の方々、運営にあたった内閣府、関係省庁、議員連盟、そして傍聴に来てくださったたくさんの方々にも感謝したい」(樋口進会長)
 今後も対策の推進に関し、必要に応じこのメンバーが招集される予定です。
 

アルコール健康障害対策推進基本計画(第1期)案

平成28年2月10日 関係者会議で採択

●計画対象期間 平成28年度〜平成32年度のおおむね5年間
●基本計画策定後3年以内に、内閣府から厚生労働省に移管


【重点課題1】
飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、
将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防

1)特に配慮を要する者(未成年者、妊産婦、若い世代)に対する教育・啓発
 (2)アルコール依存症に関する正しい知識・理解の啓発
 (3)目標:健康日本21に準拠


【重点課題2】
アルコール健康障害に関する予防及び相談から
治療・回復支援に至る切れ目のない支援体制の整備

 (1)アルコール健康障害への早期介入
 (2)地域における相談拠点の明確化
 (3)アルコール健康障害を有している者とその家族を
    相談、治療、回復支援につなぐための連携体制の推進
 (4)アルコール依存症の治療等の拠点となる専門医療機関の整備
 (5)目標:地域における相談拠点、依存症の専門医療機関が
    すべての都道府県において1箇所以上定められること
    (ここでいう「専門医療機関」の定義は、別に定める)


●この基本計画をモデルに、都道府県における推進計画を策定する
●第1期基本計画の進捗状況を把握・評価し、第2期の目標設定について検討する
 

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