「WHO効果」はどれほど?
06年企業アンケート 結果報告

 今年で13回目になる企業アンケート、下記の11社を対象に06年1月一月に実施しました。
アサヒビール/サッポロビール/サントリー/キリンビール/大関/日本盛/月桂冠/白鶴酒造/メルシャン/宝酒造/カルピス
 全社が期限どおりに回答、その内容を抜粋してご報告します。冒頭から難しい話が多くて恐縮ですが……。

「自主基準」への各社の取組みは?

 今回一番の焦点は、05年10月に施行となった酒類関係団体による「酒類の広告・宣伝に関する自主基準」です。
 この改訂版「自主基準」は五月にWHO総会でアルコール対策がスタートを切ったことを受けたもの。
 WHOはすでに、国際的な広告規制作りへの意欲を各国のメーカーに対し表明しており、メーカー側は強く反発。それでは、日本のように酒類の広告や販売促進に法律面での規制がなく、ほぼ「野放し状態」の環境で、企業による「自主規制」がどこまで有効なのか、注目です。
 自主基準の施行直後、複数の「基準破り」が発覚したこともあり、「基準の内容を社内外に周知徹底させるため、具体的にどんな方法をとったか」を質問してみました。ちっとも「具体的」でない回答も見られる中、なるほどと思えたものを抜き出します。
「全事業場長に対し、主旨説明とその内容を文書により伝達して、周知・徹底を行ないました。また、本社内の直接業務に携わる部門担当者には会議召集の上、周知・徹底を行ない、広告代理店等には当該担当部門より伝達周知・徹底しました」(サッポロ)
「全国の営業企画担当、本店各部門の広告等の担当者、また広告代理店に対しての研修会等」(キリン)
「商品・営業戦略部、品質保証部、広告部で共有会議を開き……説明すると共に……イントラに掲示」(メルシャン)
「関係部署に対して新基準の内容についての説明会を開催し、その際に今回の改訂に至る背景や業界内の議論過程を説明することで、より深い部分での理解が可能となるように配慮しました」(宝)
 自社の広告が基準を守っているかどうかチェックする部署や方法については、
「『表示委員会』と称する関連部門横断的なチェック機関」(アサヒ)
「広告素材に関し、広く社内各部門の意見を収集するイントラネットを使用したシステム」(サッポロ)
「十二月の役員会議で『ARP倫理審議会』の発足が決定」(サントリー)
 など、規模が大きなビール四社はシステム化されているようですが、その他では「広告を作る人がチェックしている」ケースが多数。いずれにせよ、第三者的なチェック機関が必要です。単に書類上の形式的なチェックではなく、消費者の側に立った監視が欠かせないと感じました。
 気になったのは広告・宣伝の内容に関し「これまでの自社の基準で十分クリアしていたから、基準の改定で見直す点はない」という主旨の記述が多数あったこと。これまで数々の申し入れを重ねてきた立場からは、かなりの感覚の違いにびっくりです。
 朗報は、車体広告・駅構内の柱巻き広告などの「交通広告」が、基準の改定で一掃されたこと。全社が「今後はやらない」と回答しました。

CMでの配慮項目は?

 下の表は「CMについて配慮している項目」を各社にチェックしてもらったもの。昨年と変化があった項目は矢印で示しています(カルピスはCMを行なっていないため、表からはのぞく)。
 多くの社が、今年は配慮項目を増やしてきました。
 特に、自主基準でも規制の対象となったいわゆる「キャラクター商法」については、今年初めて全社そろって「しない」との回答。
 また、自主基準で「スポーツ時や入浴時の飲酒を勧奨誘発する表現」を使用しない、との項目があることから「スポーツの場面と飲酒をからめない」「スポーツイベントの冠スポンサーにならない」へのチェックも増えています。
 各社の担当者の解釈の違いもあるため、チェック項目が多いほど予防対策が進んでいる、とは言い切れませんが、こうした配慮が必要だとの認識を持ってくれたことに期待したいと思います。なお白鶴は、年を追ってチェック項目を増やしてきましたが、今回ついに全項目にチェックが!中でも「飲酒シーンや喉を鳴らす効果音を使わない」については、今後、他社にもぜひ考えてほしい項目です。

CMでも妊娠・授乳中の「警告表示」が実現?

 ほぼすべてのアルコール飲料のラベルに「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」などの表示が実現しています。この情報をCMでも流せないか、質問してみました。
 CMの時間やスペースが限られていることから「検討していない」との回答が多かった中、「今後検討していく考えです」(大関)、「実施の方向で検討を進めています」(月桂冠)、「検討しております」(白鶴)と、日本酒の会社から積極的な回答が。ぜひ期待しています!

試飲会は続いている?

 昨年のアンケート結果で、飲酒運転や未成年者の飲酒につながるリスクがある「試飲会」を中止する社が出始めたことを報告しました。冷やしていないサンプル缶を配布することはあっても、その場で飲めるような店頭・街頭での試飲会は中止という社が増えています。現在も続けているのは、日本盛、月桂冠、メルシャン、カルピスの四社。

 なお、自主基準はさらに改定され、今年五月一日から施工になるとのこと。表示内容についてさらに細かく定めるなどしていますが、たとえば「お酒は適量を」「お酒は二十歳になってから」のような表示に、実際のところどれほどの効果があるでしょうか?
 予防のためには「過度の飲酒は肝臓・脳などに悪影響を与える他、依存症の危険があります」「未成年者の飲酒は心身の成長に悪影響を与え、依存症となる危険が増します」といった、はっきりした情報が必要なのでは? 企業の自主規制には限界があり、やはり法的な規制が欠かせないのではないでしょうか。

CMなどの広告や販売促進で、各社が「配慮している」こと
○……配慮している
●……配慮していない 





















業界のCM時間規制を守る
子ども番組の前後にCMを流さない
子どもに人気のバラエティ番組などの前後にCMを流さない
スポーツイベントの冠スポンサーにならない
●→○
●→○
大量飲酒や一気に飲むような飲酒をすすめない
広告に未成年を登場させない
広告に子どもに人気のあるタレントを使わない
●→○
スポーツの場面と飲酒をからめない
※1
○→●
●→○
●→○
歩きながら飲んだり立って飲むシーンを使わない
●→○
※2
飲酒シーンや喉を鳴らす効果音を使わない
酔いの陶酔感を強調するような表現を使わない
「飲まないでどうする」のような挑発的な表現を使わない
飲酒を「大人っぽいこと」だとアピールしない
飲酒を「かっこよさ・成功・セクシー」などの価値観と結びつけない
●→○
アルコール飲料を「健康・ダイエット」と結びつけない
●→○
動物等のかわいいキャラクターを販売促進に使用しない
●→
●→○
未成年を意味する言葉を商品名に使用しない

※1 運動中はNGですが、スポーツの後平静に戻って、というシーンはあります ※2 静止して立ってというシーンはあります