2003年8月22日

JRバス関東株式会社社長  東海林保 様
日本バス協会会長  斎藤 寛 様
国土交通大臣  扇 千景 様

日本アルコール問題連絡協議会(加盟10団体)
会 長  上野 佐
〒103-0007 中央区日本橋浜町3-19-3 ソグノ21ビル2F
特定非営利活動法人アスク内
Tel 03-3249-2551 Fax 03-3249-2553

日本アルコール関連問題学会
理事長  丸山 勝也
〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5−3−1
国立療養所久里浜病院内
Tel 0468-48-1550 Fax 046-849-7743


バス運転者の飲酒運転を防ぐ
総合的なアルコール対策を求める要望書

 8月18日、JRバス関東の運転者が、「走り方がおかしい」という後続車の110番通報で現行犯逮捕されました。呼気1リットルあたり0.85ミリグラムのアルコールを検出、かばんには酎ハイの空缶2本のほかにアルコールのにおいのする2リットル入りのペットボトルと未開封の焼酎3本が入っており、運転者は回送中に酎ハイを飲んだことを認めています。
 乗客の命を預かるバス運転手が、なぜこんな飲み方をするのでしょうか。その疑問に対する唯一の答えが、「アルコール依存症」という病気です。
 JRバス関東では、乗車前の対人点呼やアルコール検知を義務づけていたとのことですが、検知器を使う検査は「自己検知」にすぎず、形だけのずさんな管理体制だったことが明らかになりました。また、この運転者は2年前、業務時間外に酒気帯びでつかまり免停になっていたのに会社に報告しておらず、支社ではその事実を知った後も何の手も打たず、本社に報告もしていませんでした。介入する絶好のチャンスがあったのに、組織的に見逃していたのです。
 JR東海バスでも、昨年7月にベテラン運転者が酒気帯びで蛇行運転し、懲戒解雇になりました。5時半に焼酎をコップ1杯飲み、出勤時には空きビンに焼酎を詰めて持参、途中でチューハイ2缶と焼酎1ビンを購入、12時半に乗客を乗せて出発するまでにチューハイ2缶を飲み、出発後も途中のサービスエリアで焼酎を口にしたとされています。この運転者もアルコール依存症がかなり進行していたようすがうかがわれますが、JR東海バスも同様に、何ら介入をしていませんでした。
 事件が起きたときに職場が最もよくとる対応は、処罰としての懲戒解雇であり、予防としては対人点呼やアルコール呼気検知の強化です。これらは当然の処置ではありますが、背景にある「アルコール依存症」に介入せずに根本的な解決はありません。職業運転者は、不規則な勤務から寝酒に頼り、依存へと進む例が多く見られます。依存症は、自ら治療を求めないのが病気の特徴ですので、周囲からの積極的な介入が絶対に欠かせないのです。
 今後、アルコール呼気検知等で問題が発覚したとき、断固たる処罰は必要でしょう。しかし処罰だけで病気は回復しません。たとえ解雇しても、他の交通運輸機関に流れ、飲酒運転を繰り返して人命を危険にさらす可能性があります。依存症に陥った運転者は、職場からの介入によって治療へとつなげ、「断酒を基盤にした回復」という根本解決を図る必要があるのです。
 アルコール依存症は放置すれば進行しますが、治療すれば回復可能な「病気」です。早期に発見すればするほど、本人にも職場にも、そして社会にも有益です。しかし、飲酒に甘く、依存症という病気についての認識がない日本の職場では、初期の兆候を見逃したりかばったり大目に見たりすることで病気を進行させてしまいがちです。
 最悪の事態が起きてからあわてて懲戒解雇する、というパターンをこれ以上繰り返さないために、バス業界をあげて、以下の総合的なアルコール対策に着手されることを、強く要望します。

第1次〜第3次までの「総合的なアルコール対策」を実施する。

●第1次予防<啓発>……アルコールの人体への作用・代謝にかかる時間・害・アルコール依存症の兆候などについて、職員に徹底した予防教育・啓発を行ない、職場のルールも周知する。管理職は、アルコール問題の早期発見や介入の方法などの研修を受ける。

●第2次予防<早期発見・介入>……定期健診でのアルコール性疾患のチェックや業務態度、点呼時のアルコール検知などから、早期に職員のアルコール問題を発見して介入し、アルコール依存症専門機関につなげる。(介入を受け入れないときには、解雇もやむをえない)

●第3次予防<治療・職場復帰>……アルコール依存症を病気として認め、差別をしない。他の病気と同様に、治療のための療養休暇や職場復帰上の便宜を図る。その後も、断酒継続に配慮する(職場で飲酒を勧めない、断酒会など自助グループへの出席に便宜を図るなど)

 上記の対策を実行するためには、運行管理者・人事担当者・健康管理者・管理職がアルコール問題に関する正しい知識を持つ必要があります。自動車事故対策センターからこの春発行された運行管理者用テキストに、「一歩踏み込んだ飲酒運転防止対策」(特定非営利活動法人アスクが執筆)が掲載されていますので、参考にしてください。また、研修に関しては、当協議会を通じて各地の専門機関に協力を要請することも可能です。

以上

※日本アルコール問題連絡協議会 加盟団体:
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)/イッキ飲み防止連絡協議会/
アディクション問題を考える会(AKK)/(社)全日本断酒連盟/日本アルコール・薬物医学会/
日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/日本禁酒同盟/日本キリスト教婦人矯風会/
日本禁酒禁煙協会/救世軍日本本営

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