◆ボン・ボヤージ!



「ウォンウォンウォン」

 シラーフが出発のスイッチを入れようとしたとき、扉の外でコロンボが激しくほえた。どうやら一緒に連れて行け、といっているらしかった。

 タイムトラベル号の扉を開けると、いきおいよく、コロンボが乗り込んできた。

「そうじゃ、ポアロ、いやコロンボも連れて行くといい。20年後の世界では何が起きているか分からないからな。ついでに、このレーザー銃ももっていきなさい」

 スカルピー教授がシラーフにピストルのようなものをわたした。

「この銃は相手を殺すことはできないが、体をしびれさせてしばらくの間動けなくさせることはできる。それから、うむ、言い忘れたが、タイムトラベル号には自動危険回避装置がついておって、もし万一20年後の着地点が危倹な状態の場合は、自動的に安全な場所に移動するようになっておるから安心しなさい。それと……」

 スカルピー教授はまだ言い忘れたことがあるようだった。

「そうそう、大事なことを忘れてた。この時間超越発信器を腕にはめていきなされ。緊急時に横についているボタンを神せば、わしに連絡ができるからな」

 スカルピー教授は腕時計のようなものを手渡した。

「もう言い忘れていることはないんでしょうねえ」

 シラーフは少し心配になって凝いの目でスカルピー教授を見た。スカルピー教授は、大事なことを言い忘れていたわりにはすずしい顔をしていた。

「おっと、もう一つ。ポアロの首にこれをつけておこう」

「何ですか、それは?」

「いや、どうっていうほどのものでもないがのー。万一のためじゃ、困ったときには開けてみなされ」

 スカルピー教授はコロンボの首に樽のようなものを首輪よろしくまきつけた。

「これでよし。さあ、出発しなさい、ボン・ボヤージ!」

「ほんとにもう大丈夫なんですか」

「ボン・ボヤージ! バイア・コン・ディオス!」

 何やら意味不明の言葉をしゃべって、勝手にタイムトラベル号の扉を閉めてしまった。

「さてと……、ほんとに大丈夫なのかなぁ」

 狭い半円球の室内に閉じこめられて、シラーフはちょっと不安になった。しかし、今さらやめるわけにもいかない。、コロンボをまず隣の席に座わらせて、ベルトをしめてやった。そして自分は操縦席に座わり、やはリベルトをしめた。

「ウォンウォン」

 大丈夫さ、さあ行こうとコロンボがうながした。シラーフは、20年後の未来に時を合わせてあるのをもう一度確かめると、大きく息を吸って、エイヤッとスイッチを入れた。