◆二つの事件の共通点



 探偵シラーフが深い眠りから覚めたのは、お昼をかなり過ぎていた。ロッキングチェアに座って考えごとをしながら、いつの間にか眠ってしまったらしい。サファリジャケットのままである。

「家に戻ってきたのは、たしか朝の7時ごろだったな……」

 寝ぼけまなこで、昨夜から今朝にかけて連続して起きた事件のことを思い出した。シンゾウ町での深夜の大捕物、帰り道に出くわしたイブクロ広場でのナゾの交通渋帯と大地震――。

「二つの事件は、どこかで結びついているような気がするんだが、うーむ」

 イブクロ広場からの道すがら、ずうっと考え続けてきたことを、もう一度反すうし始めた。

「どちらも電気信号に乱れを生じている。シンゾウ町の事件の場合は、フクジン町を経由して、ケーブルの途中にある中継施設に侵入してきた。ユーモン出口の信号の場合も同じだろうか……。もし、途中からの侵入でないとしたら……。ケーブルの先端はノウ特別区まで延びているはずだな……」

 とりとめもない考えが次から次へとわいてきた。ノウ特別区というのは、国全体を管理する最も重要な地域で、あらゆる地区のあらゆる信号のケーブルが全部集まっていた。

「しかし、この地区への侵入は非常にむずかしい。警戒厳重な検問所があって、一般の人はそうたやすく入れないようになっている……」

 ノウ特別区へ行く方法はそれほど多くはなかった。一般的な交通手段としては、シンゾウ町サシンシツ駅から出ている地下鉄線に乗って行くしかなかった。しかし、この線で行った場合、ノウ地区に入る手前の駅でかなり厳しいチェックを受ける。

「変装の名人ならば、侵入することはあるいは可能かもしれない。まてよ、オンザロック・ホームズの『犯罪辞典』によれば、アルコール・ルパンの手先、怪人アセトアルデヒドはカンゾウ地区に潜んでいたはずだ。すると、カンゾウ地区からシンゾウ町へいったん行き、そこからノウ特別区へ侵入をくわだてる……、そして、ユーモン出口に信号を送っている源を被壊する」

 シラーフはそばにあった紙に図を書いてみた。カンゾヴ地区・シンゾウ町・ノウ待別区・イブクロ広場のユウモン出口、そしてそれらを線で結んだ。

 頭がこんがらがってくると、図を描いて整理するのが探偵シラーフの癖である。図を描くと内にあるゴチャゴチャを全部外へはき出してしまうような快感があった。

「やはり、カンゾヴ地区とノウ特別区には一度行ってみる必要がありそうだな」