◆ドンドン警視庁のタイコ刑事



「侵入してくる大勢のカテコールアミンたちをつかまえるには、一人では無理だ。助けがいるな…」

 と深偵シラーフは思った。

「いったん引き上げたほうがよさそうだ」

 シラーフがロープを使ってようやく穴をよじのぼり、ハート家の床下からはい出すと、異常な揺れはいくぶんおさまっていた。

 顔を上げると目の前にミス・ハートが青白い、今にも泣き出しそうな顔で立っていた。

 そのかたわらに、コロンボがすでにおすわりをしていて、

「どうだ、オレの方が早かっただろう!」といわんばかりに「ウォン」とひと鳴きした。

「シラーフさん!」

 ミス・ハートが探偵シラーフの胸に飛び込んできた。目からポロリと涙が落ちた。

「大丈夫です、大丈夫です。原因がわかりましたよ。大丈夫です。安心してください」そう言いながら、シラーフは自分の体の胸のあたりで「トットットッ」と鼓動がだんだんに早くなっていくのを感じていた。

 探偵シラーフはサファリ・ジャケットの胸のポケットから、緑色のカバーのついた小さな手帳を取り出した。

「え-と、たしか、ドンドン警視庁にはタイコ刑事がいたはずだな……」

 パラパラと手帳をめくり、タ行のページにタイコ刑事の名前をみつけると、早速、電話のダイヤルを回した。

「もしもしいっ。こちら特捜班のタイコですがぁ」

 聞き憶えのある声が返ってきた。語尾をわざと強め、ちょっといばったように話すのが特徴だった。

「私立深偵のシラーフです。二年ぶりですね」

「あ、どうも、シラーフどのですか。失礼しました。その節はいろいろお世話になりまして……」

 ロ調がコロッと変わった。実は二年前、ちょっとした事件をシラーフが解決してやったことがある。そのおかげで、タイコ巡査がタイコ刑事に昇進したといういきさつがあった。探偵シラーフには頭が上がらないのである。

「実はシンゾウ町の異変の原因をみつけまして、ぜひドンドン警視庁の優秀なるお力をお借りしたいと思いまして」

 優秀なる、というところに力を入れたせいか、タイコ刑事は二つ返事で引き受けてくれた。ドンドン警視庁としても、住民からの110番になんとかしなければと考えていた矢先だったこともあった。